貯金も年金も十分…堅実なA夫婦が友人から聞いた「争族」の苦労

65歳のA夫婦は、ともに公務員として堅実な人生を歩んできました。住まいは都心から電車で40分の郊外に建つ戸建て住宅で、住宅ローンは完済。また、2人の子どもはそれぞれ別の場所で家庭を持っています。

そんなA夫婦には4,000万円の退職金を含めて約7,000万円の貯蓄がありました。このほか、65歳からは夫婦で月35万円の老齢厚生年金を受給しており、毎月の生活費はこの年金だけで賄えています。

そんなゆとりのある暮らしを続けていたある日のこと、夫婦の家に遊びに来た友人から、次のような話を聞きました。

「このまえウチの親父が亡くなったろ? あれ、遺産の話で揉めてさぁ、ひどいもんだったよ。特に実家の遺産分割が難しくて兄貴と喧嘩になってな……。Aのところも気をつけろよ」

身近で起きた争族話に肝が冷えたAさんは、友人が帰ったあとに妻のBさんと話し合いました。

「子どもたちには相続で揉めてほしくない。トラブルを避けるためにも、自分たちの資産はなるべく自分たちで使ってしまおう」

こうして、A夫婦は終活を始めることにしたそうです。

“人生最後の贅沢”…「高級有料老人ホーム」に入居することに

「知り合いから聞いたんだが、どうやら自宅を売って、老人ホームを終の棲家とする人が増えているらしい」

終の棲家について話し合った2人は、それなら自分たちも老人ホームに入ろうと考えました。そして施設を調べるうち「高級老人ホーム」に心惹かれた2人。どうせならいい生活をしようと、数件の高級老人ホームをリストアップしました。

さらに、不動産業者に自宅の売却価格を査定してもらうと、諸経費を引いても3,000万円は手元に入るとのこと。

「口座の7,000万円と合わせて1億円か……これなら老人ホームの入居一時金は余裕だな。毎月の諸費用も年金で賄えそうだし」

高級老人ホームへの入居が現実味を帯びた夫婦は、2人の子どもに相談。子どもたちは「父さんと母さんのお金なんだから、俺たちのことは気にせず好きに使って」と肯定的です。

その後も情報収集や施設見学を経て、ついに「ここだ!」と感じる施設を見つけた2人。憧れの高級老人ホームへの入居を決めました。