引っ越しから約1ヵ月…Aさんがこぼした“後悔”

その後1ヵ月ほど経って、Aさんから筆者に連絡がありました。駅近の閑静な住宅街にある手ごろなマンションが見つかり、築45年のアパートは退去したそうです。

「やっぱり、自分の家があるのは安心ですね。いま思うと、定年になって浮かれていたのかもしれません。旅先の豪華なホテルを探す気分で老人ホームを探してしまい、後悔しています」

夫婦が老人ホームを探すことになったのは「友人の相続トラブル」がきっかけでした。しかし、夫婦の子どもが相続で揉めないよう対策するのであれば、なにも夫婦が高級老人ホームに入居する必要はありません。銀行預金と実家を売却したお金を折半するよう、あらかじめ子どもたちに話をしておくか、心配なら遺言書を残しておけばよかったのです。

老人ホーム退所後に作成した“完璧な老後のライフプラン”を定年前に練り上げておけば、今回のような事態は防げた可能性が高かったでしょう。

大筋でも、老後のお金の使い方を事前に決めておくことは重要です。もしも予算以上に費用が必要となった場合でも、趣味や予備費から削ったり、収支を調整したりすることが容易になります。

老後の無駄な散財を防ぐためにも、現役のうちに定年後のお金の使い方を考えておきましょう。

牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員