70歳夫婦の「穏やかな日々」が終わりを告げる

郊外の戸建に住む70歳のAさんと妻Bさん。10年前、Aさんが定年退職してからは、自家用車の買い換えや夫婦での旅行など、穏やかな老後を満喫していました。

そんなある日、夫婦は近所の人が「家の段差で転んでその後寝たきりになった」という話を聞き、「うちも他人事ではない」と、40年前に購入した自宅のバリアフリー化を思い立ちます。

夫婦はそれまで、1,000万円の貯金に手をつけることなく、月23万円の老齢厚生年金で生活をしてきました。そこで、リフォーム費用はこの貯金から捻出しようと考えます。

そんな矢先、都内の会社に勤めるひとり息子のCさん(39歳)から1本の電話がかかってきました。

「仕事を辞めたからしばらく実家に住まわせて」

夫婦が驚いてワケを聞くと、上司のパワハラがきっかけでうつ病となり退職し、療養をするため実家に戻りたいとのことです。

Cさんは、勤務先から若干の退職金が支給されます。また、労災保険の休業補償給付を申請していますが、しばらく休んだらまた働くとのことでした。とはいえ、いつから働けるか目途が立たない状況です。

そこで夫婦は、無職の息子との生活を踏まえて「リフォームにいくら使えるのか」「今後の収支はどうすればいいのか」をFPに相談しました。

リフォームは白紙に

「息子が受け取る退職金や休業補償、失業給付などのお金は、息子が今後またひとりで生活するときの資金として手をつけずに貯めておきたいんです。私たち夫婦のお金で、3人が暮らすためのシミュレーションをお願いします」

夫婦からそう依頼されたFPが試算した結果、家計支出を減額するにも限度があり、リフォームをするどころか、あと15年ほどで家計が破産しかねない状況です。

そのため夫婦は「息子のためだから仕方がない」と、リフォームを諦めたのでした。