息子がいるから大丈夫…60代夫婦の油断

息子「俺、結婚しようと思うんだ。彼女に会ってもらいたいんだけど、今度の日曜日は空いてる?」

父「そ、そうか、そうか! おめでとう(結婚!? おいおい聞いてないぞ……)」

母「よかったわね、お相手はどんな人?(どうしましょう……)」

1年前に定年退職して現在無職のAさん(66歳)と、専業主婦の妻Bさん(61歳)。ふたりは、東京都内の戸建て(住宅ローン完済)に、ひとり息子のCさん(41歳)と住んでいました。

大手商社に勤めるCさんは、頻繁に出張が入るため家を空けることも多く、「家を借りるよりも実家のほうが効率的」「いずれは家を出るから」と言い、かれこれ10年近く両親と同居していました。

Cさんは「家賃分」として、律儀に毎月5万円ずつ親に渡しています。また休みには、自分の車に母親を乗せて食料品などの買い出しに付き合い、その支払いもしてくれていました。

そんなCさんから、夫婦は諦めかけていた「喜びの報告」を聞き、驚愕します。

愛するわが子の結婚ですから、もちろんうれしい……しかし、決して“手放しでは喜べない”身勝手な事情があったのでした。

実はAB夫妻、Cさんが老後の面倒を見てくれると油断していたのです。

そのため「息子が結婚して家を出るとこれまでのような援助がなくなる……自分たちの生活は大丈夫なのか?」と、喜びよりも不安が勝ってしまったのでした。

援助をあてにした資金計画の危うさ

AB夫妻は本来、Aさんが65歳から老齢厚生年金を月約19万円受給、70歳からは、ふたりで月に約25万円受給する見込みでした。

しかし夫婦は「息子がいるから大丈夫」とCさんの援助をあてにして、Aさんの老齢基礎年金のみを、70歳まで繰り下げている最中だったのです(※)

(※)老齢基礎年金だけを繰り下げた理由は、老齢厚生年金を繰り下げると、Bさんが65歳になるまで受給できる加給年金が支給停止となるため。

これにより、Aさんが70歳になってからは、ふたりで月に約28万円の年金を受給できる見込みでした。

そのため、たまに貯蓄を取崩すことがあっても、深刻に考えることなく過ごしていたといいます。

しかし、Cさんが家を出ることにより、家計が破産するかもしれないと心配になったのです。