“悠々自適な老後”が水の泡に…「定年直後」の悲劇

――築40年、六畳一間のアパート。日中でもうす暗く、天井から吊り下がった小さな白熱灯と畳の上に直接置かれたテレビが、わずかに部屋を照らすばかりです。

Aさん(65歳)は、テレビから流れる夕方のニュース番組を横目に、コンビニで買ったおにぎりとカップ麺をすすります。

「……うまいけど、しょっぱいな」

半年前に、長年勤めた運送会社を定年退職したAさん。現役時代の年収は900万円と申し分なく、当時は戸建てのマイホームで、妻子と暮らしていました。年金受給見込額は夫婦あわせて月23万円、貯蓄は退職金の1,500万円を含めて約1,850万円です。

そんなAさんがいま六畳一間のアパートで暮らしているのにはワケがあります。

37年間連れ添った妻からの「まさかの宣告」

ねえあなた、これからはお互い別の人生を歩みましょう

Aさんと妻のBさんは結婚して約37年。定年直後のこのタイミングでなぜ離婚を迫られるのか、Aさんにはまったく見当がつきませんでした。

そんなA夫妻には、すでに結婚して実家を離れているひとり娘のCさん(33歳)がいます。CさんはAさんからこの話を聞き驚いたものの、とりあえず両親に冷静になってもらおうと、冷却期間を置くことを勧めました。

娘が間に入った結果、夫婦はいったん籍はそのまま別居することに。

妻のBさんは早速「私は今日から離れで寝泊まりするわ」と物置となっていた離れに落ち着きましたが、思い出の詰まった家にひとりでいることが耐えられなくなったAさんは、新しい住まいを探すことにしました。

しかし、高齢・無職のAさんの物件探しは難航。ようやく入居できたのは、築40年の古びたアパートでした。

ひとまず新たな住まいが見つかったことを娘のCさんに伝えます。

Cさん「大丈夫? なにか不安なことはない?」

Aさん「なんとか家が見つかって安堵しているが、離婚するのにどのくらいの費用が必要なのか見当もつかない。生活していけるのか不安だ」

不安を口にしたことでますます将来が恐ろしくなったAさんは、誰かに話を聞いてほしいという思いから、今後のライフプラン設計もかねてFPへ相談することを決めたそうです。