50代になると、人生のセカンドキャリアを意識し始める人が増えてきます。定年後も社会とのつながりを持ちたいという思いは、多くの人にとって共感を呼ぶでしょう。新たな挑戦を通して、自身の可能性を広げることは、人生をより豊かにする一歩となります。なかには長年のキャリアに区切りをつけ、学び直しを選ぶ人も。多様なバックグランドを持つ仲間たちとの出会いや、熱い議論を交わす場での学びは、充実した経験となるはずです。本記事では、山口一夫氏の著書『シニアライフの人生設計』(ごきげんビジネス出版)より、同氏の実体験を紹介。老後、なんのために生きるのかを探し出す際のヒントになるかもしれません。
修論に選んだテーマ
私は自分たちシニア世代の学び直しに強い関心をもっていたので、自分の1年目の修論テーマを「我が国セカンドステージ教育の一考察」としました。
この修論を通じ、全国には多くのシニア大学があるものの、「そこで提供されている講座は必ずしも魅力的なものではない」という調査結果に問題意識をもったのです。私の住む埼玉県も例外ではなく、平成25年1月に行われた「さいたま市生涯学習市民意識調査」からも同じ課題が浮き彫りとなっていました。
これらに加え、より身近な問題としては、私の大学の仲間たちも「第2の人生で自分が本当にやりたいことは何か」を見つけられないまま卒業していく、といった現実も目の当たりにしたのです。課題の解決策を日々悶々と考えているうち、セミナーによって解決できそうなイメージが湧いてきました。そのような矢先、脚本家の倉本聰氏が朝日新聞に掲載した次のメッセージに背中を押されることになります。
“60代の若者たちへ。
(※中略※)
もう一度、スタートした原点や初心に立ち返ってみる。
学校を出て就職したばかりの頃、誰にも夢があったと思うんですね。
(※中略※)
還暦や喜寿、定年退職などの節目に再度、初心を振り返るのも意味のあることだと思います。
仕事を離れた後、残りの人生をどう生きるか。いろいろな選択肢があると思いますが、そのことによって喜びを見いだせるか見いだせないか、大切なのはそこでしょうね。それが「元気と活力」にあふれた、「楽しく明るい」日々の源になると思うんです。自分は何に喜びを感じるのか。それを識しることこそが次の生き方につながっていくのではないでしょうか。”
■2018年1月21日 朝日新聞広告
倉本氏のメッセージを読んだあと、私に迷いはありませんでした。
「たとえどんなに大変でも、私を含めた中高年やシニア世代が自分と向き合い、自分はこれから何をやりたいのか、なんのために生きるのかを導き出すためのセミナーを開発すること。そして、そのためにもう1年、専攻科へ進み、この目的を達成しよう」と自分の強い決意がかたまった瞬間です。
山口 一夫
ライフデザイン講師