定年退職後、時間とお金のゆとりがあっても、なぜか心が満たされない――。この漠然とした「何か」に悩むシニア世代は少なくありません。内閣府の調査では、中高年(40〜64歳)のひきこもりが61万人に上り、そのきっかけとして「退職」が最も多いとされています。誰もが憧れる「悠々自適のセカンドライフ」の裏側で、一体何が起きているのでしょうか? 本記事では、山口一夫氏の著書『シニアライフの人生設計』(ごきげんビジネス出版)より、充実した第2の人生を送るためのヒントを考察していきます。
名前を呼ばれるのは病院と役所だけ…中高年の引きこもりは61万人。退職後に老後資金・時間にゆとりがあっても「今日、やることがない」
退職後に時間的なゆとりとお金があっても満たされない何か
人生80年時代と人生100年時代では単純に寿命が延びるだけでなく、ライフスタイルが大きく変わります。また、日本の現シニア世代及び定年退職を迎えようとしている人たちは、これまでの3ステージ型のライフスタイルの呪縛(教育・仕事・引退の3ステージしかないという思い込み)から自らを解放できていない人たちが大変多いです。充実した第2の人生を送るために、シニア世代にとって本当に大切なものは何かを別の角度から探っていきます。
40〜50代で働き盛り、日々の仕事に忙殺されているビジネスパーソンにとって、退職後に自由な時間を手に入れ、しかも経済的に余裕のある先輩方は、心からうらやましい存在に映ることと思います。
実際に時間的なゆとりと経済的な安心を手に入れている退職組の人たちは、果たして本当に心から満たされ幸せを感じて生きているのでしょうか。私は仕事柄、多くのシニア世代とお会いする機会があるので、挨拶をする際に相手の状態がなんとなくわかるようになってきました。
60歳以上の人たちに挨拶すると、本当に元気で幸せそうな人は目に自信がみなぎり、元気と活力を感じさせる何かをもっています。さらに、本当にいい顔をしているのです。一方、ふつうの人たちは全身から伝わってくるものもふつうで、「まあまあ、いまはなんとかやっている」といったメッセージが伝わってきます。
これはあくまでも私の個人的感覚ですが、元気で活力にあふれて幸せそうでいい顔をしている人の割合は、10人に1人いるかいないかでしょうか? 「ふつうになんとなく生きている人たち」が大多数を占めているように感じます。
それでは、元気で活力にあふれ幸せそうな一部の人と、ふつうになんとなく生きている人たちとの違いは、いったいどこにあるのでしょうか。共通点は何かを探ると、「退職によって人々が共通に失うもの」といった視点から見えてくるものがあります。その視点からの逆説的アプローチとなりますが、「退職後に時間的なゆとりとお金の安心があっても満たされない何か」を探っていきます。