熟年離婚の実状

高齢者の離婚問題に詳しい弁護士法人プラム綜合法律事務所によると、熟年離婚とは「結婚して20年以上たってからの離婚を熟年離婚とする」と定義しています。

離婚の実状については、厚生労働省が人口動態統計特殊報告「離婚に関する統計」(2022年8月)を発表しています。この調査結果では、現在は結婚した夫婦の約3組に1組が離婚しているようです。離婚した夫婦を同居期間別に見ると、「5年未満」の割合は1996年と1997年の40.1%をピークに低下傾向でした。

一方で、20年以上同居した「熟年離婚」の割合は上昇傾向にあり、2020年は1950年以降で最も高い21.5%となりました。皆さまの肌感覚としてどう感じているかわかりませんが、昭和のころと比べると熟年離婚は確実に増加しているようです。

次項でその理由について見ていきましょう。

熟年離婚する理由

なぜ熟年離婚が多いのか、その理由を探っていきます。弁護士法人プラム綜合法律事務所によると、熟年離婚には6つの大きな理由があると分析しています。

1:女性が稼げるようになったから

よき昭和の終身雇用時代では、男性が外へ働きに出て女性が専業主婦として家を守るスタイルが一般的でした。しかし、いまの世の中では女性が男性と同様に社会進出しているため、仮に離婚の原因が男性側にある場合、女性側は金銭面のことで夫に我慢することなく離婚しやすくなった、といえるでしょう。

2:子どもが独立したら離婚するつもりでいたから

離婚の考え方として、子どもの精神に悪影響が出る期間は我慢して子どもが独立すれば問題ない、と考える人たちも多いようです。

私の身近なところでもこれに近いケースがありました。その夫婦が離婚をするとき、1人目の子どもは成人し自立していました。しかし、2人目の子どもが中学生だったため、せめて高校を卒業するまでは、と長いあいだ仮面夫婦を装っていたのです。

3:年金制度が変わったから

2007年4月以降に離婚する夫婦の場合、結婚期間中に夫が支払った保険料分の厚生年金を夫婦で分配できるように法律が変わりました。この新制度は、離婚を考える際に経済的自立がネックとなっていた女性たちの背中を大きく押すこととなりました。

4:浮気や不倫をされたから

長年不倫をされていたが子どもや体裁のため別れないでいたパターンと、熟年になってから不倫されて別れるパターンがあります。

年金制度と浮気や不倫が関係した事例を、ある老紳士の方から聞いたことがあります。その方は家庭がある身で若い女性と不倫関係になってしまったそうです。その後、奥さまと離婚しました。裁判の結果、子どもたちが成人するまでの養育費の支払い、退職金は半分を前妻に支払い、厚生年金も一部分配、という結論に至ったようです。不倫関係にあった若い女性とは幸いにもその後再婚し、現在は穏やかな様子ですが、不倫による離婚の代償の大きさに驚かされてしまいました。