「認知症」は、多くのシニア世代が最も恐れる病気です。認知症に罹患することで、医療費・介護費がかかると、老後のライフプランが大きく崩れてしまいます。未来の健康と資産を守るためにも、いまからできることを始めましょう。本記事では、山口一夫氏の著書『シニアライフの人生設計』（ごきげんビジネス出版）より、認知症予防について解説します。
シニア世代の身体的健康
私はセミナーのなかで、「皆さんは健康にとても注意しているようですが、いまいちばんかかりたくない病気はなんですか？」と質問することがあります。すると必ずといっていいほど、かえってくる病名は、がん（癌）と認知症です。ここでは、認知症の予防について最低限のことを確認していきます。
認知症に関しては、がん（癌）と比べてまだわからないことが多く、そのことがかえって不安や心配を募らせているようにも感じられます。
そのようななかで、日本のエーザイ株式会社とアメリカのバイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が厚生労働省より正式承認（2023年9月）され話題となりました。アルツハイマー病患者の脳に溜まる異常なたんぱく質（アミロイドβ）を取り除くことができ、症状の進行をおさえることが期待されています。
しかし、現時点では残念ながら「こうすれば認知症にならない」という方法はないとのこと。近年の研究では「どうすれば認知症になりにくいか」が少しずつわかってきたようです。認知症についてさまざまな情報提供をしている『認知症ねっと』によると、認知症を予防する対策は大きく分けて2つあります※。1つ目は、日々認知症になりにくい生活習慣を行うものと、2つ目は、認知症で落ちる3つの能力を簡単なトレーニングで鍛えるもの。
どうやらここでも生活習慣が大切なようです。認知症は脳の病気のため、脳の状態を良好に保つためには食習慣と運動習慣が大切、といわれています。認知機能を維持して使うためには、対人接触を行うことや、知的行動習慣を意識した日々を過ごすこと、などが重要といわれています。
参考として具体的内容を見てみると、食習慣については、野菜や果物をよく食べること、魚（ⅮHA、EPA）をよく食べること、赤ワイン（ポリフェノール）を飲む。運動習慣については、週3回以上の有酸素運動をする。対人接触については、人とよくお付き合いをしている。知的行動習慣については、文書を書く・読む、ゲームをする、博物館へ行くなど。睡眠習慣については、30分以内の昼寝、起床後2時間以内に太陽を浴びる、などとなっていました。
また、認知症になる前段階で落ちる3つの脳機能を集中的に鍛えることで、認知症の発症を遅らせる効果があることがわかってきました。どうやら認知症という病気に至る前の段階では、通常の老化とは異なる認知機能の低下が見られるようです。この時期に最初に低下する認知機能が「エピソード記憶」「注意分割機能」「計画力」の3つのようで、これらを意識して脳を重点的に使うことで認知機能の低下を予防できることがわかってきました。
参考として3つの内容を見てみると、「エピソード記憶」は、体験したことを記憶として思い出すことで、2日遅れや3日遅れの日記を書くと効果があるようです。「注意分割機能」は、複数のことを同時に行うとき適切に注意を配る機能で、たとえば料理をつくるとき一度に何品か同時進行でつくることで効果が得られるようです。「計画力」は、新しいことをするとき、段取りを考えて実行する能力のことで、効率のいい買い物計画を立てたり、旅行の計画を立てたりすることで効果があるといいます。
社会とのつながりが弱くなるリタイア後は要注意
ここまでの内容を確認すると、認知症にならないためにバランスのいい食事と適度な運動や休養を大切に、できるだけ長く仕事やボランティア活動などを続け、社会とのつながりを保ち続けることが何にも勝る認知症予防のように思えてきました。しかし、年を重ねるごとに社会とのつながりが弱くなり、難しくなっていくことも現実のようです。読者の皆さまも現在のそれぞれの状況や生活習慣と照らし合わせたうえで、それぞれの身体的健康維持について確認してみてください。
山口 一夫
ライフデザイン講師
