アパート所有中に発生する税金
この段階で他にも気を付けておきたいことは、購入時点だけではなく、賃貸経営をしていく上で毎年かかるコストや税金です。
キャッシュフローの見通しを立てることももちろん必要ですが、キャッシュフローと申告のときに作成する決算書はまったく別物になります。
一番恐ろしいのが、キャッシュフローがマイナスなのに、決算書は黒字になるという現象です。これの一番大きな要因は借り入返済です。借り入の元本返済は経費にはならないので、キャッシュフロー上ではお金が出ていきますが、税金の計算では考慮されない支払いになります。
このような状況になってしまわないように購入時点で気を付けておきたいことは、土地と建物合わせて、融資を受けて購入する場合、融資条件や利息、そして、土地と建物の按分割合などをしっかり把握して、シミュレーションをしていく必要があるのです。ここのシミュレーションを怠ると大変なことになりますので、しっかり確認しましょう。
個人名義?それとも法人名義での購入?
そして、購入時点において、一つ考えておいていただきたいことがあります。それは、個人名義で購入するのか、法人名義で購入するのかということです。
最初は個人名義で購入することが自然な流れなのですが、これから不動産投資を進めていいきたい、これからも買い進めていきたいと考えている場合には、先を見据えて最初から法人化しておくことも一つの選択肢となります。
投資物件が増えるにつれて、賃料収入が増えていき、所得税や住民税それに伴って、その方の状況によっては、健康保険料なども影響してくることがあります。そして、一定の水準を超えると所得税よりも法人税の税率の方が低くなりますので、法人化したほうが、節税になるという段階になってくることもあります。
その段階でもし法人化したいとなった場合、どのような方法が考えられるかというと、基本的には3通りの方法があります。
管理委託方式、サブリース方式、不動産所有方式です。
まずは取り入れやすいのは管理委託方式ですが、節税効果は一番低くなります。節税効果が高いのは不動産所有方式です。
しかし、この不動産所有方式を取り入れるためには、もし個人で所有している不動産であった場合、いったん、個人から法人へ不動産を譲渡する必要が出てきます。そうすると、その時点で譲渡所得税や登記費用、不動産取得税がかかってきます。
ちなみに、譲渡所得税は条件によってはかからないこともありますが、登記費用や不動産取得税はかかってきます。そうなると、先程お伝えしたように最初に個人で購入した段階でも同じように支払っているので、あとで法人化した場合には2回支払うことになります。
購入段階で、個人名義で購入するのか、法人名義で購入するのかということを最初に考えておくことも一つのポイントです。そして、この段階でスムーズに法人に移行できれば良いのですが、金融機関から融資を受けている場合には、条件によっては移行できないケースもあります。
そういう意味でも、最初の段階で、ご自身がどういう投資を今度していきたいかということを決めておくことがとても重要になってきます。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー
税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー