不動産所得と給与所得の合算による影響
課税所得が増えることで発生するリスク
近年、副業をするサラリーマンが増加しています。しかし、不動産賃貸はこうした副業には含まれないとの見方も多く、副業を禁止する会社の規則等に縛られることなく、アパート経営による副収入を期待する給与所得者も少なくありません。
給料に関しては、会社の年末調整によって年間の税額が確定しますが、これ以外にも20万円以上の所得があれば、確定申告が必要になります。所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額をいいますが、アパート経営では安定的な収入が見込めるとともに、経常的に発生する経費もそれほど多くはないため、不動産所得が20万円を超えることはそれほど珍しいことではありません。
そうなると、確定申告では不動産所得と給与所得とを合算して、追加で納付する税金を計算することになりますが、この申告を怠るとペナルティが課せられます。わずかな延滞税くらいのことかと思いきや、延滞税の税率は高く、そのうえ過少申告加算税や無申告加算税といったより重いペナルティも合わせて課せられます。また、よほどの高所得者でなければ申告しなくてもバレることはないだろうとも思いがちですが、不動産の登記情報の動きなど、何がきっかけとなって、突然、税務署から所得を確認するための「お尋ね」が届くかはわかりません。
給与所得者がアパート経営を兼業する場合、年末調整によって確定した給与所得に不動産所得が合算されれば、おおかた追加での納税は避けられません。そのため、後になって税金をまとめて負担しなければならないといった事態を招かないためにも、そして余計なペナルティを支払う羽目にならないためにも、申告の失念には十分に注意する必要があります。
住民税や健康保険料への影響
税金が増えるとなると所得税にばかり気を取られがちですが、同時に住民税にも影響してきます。所得税では、課税所得が増えるにつれて税率が高くなる累進課税制度が採用されています。これに対し、住民税の税率は一律10%に設定されているため、給与所得に合算された不動産所得の10%相当分がそのままダイレクトに住民税に反映されます。
また、給与所得者の場合、健康保険は協会けんぽや組合健保(社会保険)に加入していることがほとんどでしょう。一方、個人事業主などは各自治体が運営する国民健康保険に加入することになりますが、その保険料は所得に比例します。そのため、例えば、年金受給者が不動産所得を合算すると健康保険料は増加します。しかし、社会保険の場合、その保険料は毎月の給与を基準に決定されるため、確定申告によって給与所得に不動産所得が合算されたからといって、保険料に影響が及ぶことはありません。ここが給与所得者の副業に対するメリットの一つといえるでしょう。