志望大学の出題傾向を分析する
志望大学合格へのスタートは「基礎固め」です。そのとき、志望大学の出題傾向を知っていれば、より効率良く「基礎固め」ができます。問題量が多い大学であれば、スピードへの対策、出題形式や頻出分野などを意識すれば、限られた時間をより有効に使うことができます。
まずは、『全国医学部最新受験情報』 (時事通信社)や『大学入試シリーズ(赤本) 』 (教学社)の「傾向と対策」を基に、下記の4つの項目を科目ごとに把握したうえで学習計画を立てましょう。

理想を言えば高校2年生が終わるまでに基礎固めを完了させたいのですが、実際には3年生になってからも基礎の穴埋めが必要な人は多いと思います。その場合でも、遅くとも高校3年生の8月が終わるまでに、基本的な問題や典型的な問題であれば、見たらすぐに解法が思い浮かぶ状態になっているようにスケジュールを立ててください。
過去問演習で学習の方向性を明確にする
基礎がしっかり固まった科目については、実際に志望大学の過去問を解くのが最も有効な分析方法です。特に現役生は浪人生に差をつけられないためにも早めに過去問演習に取り組んでほしいと思います。浪人生はすでに受験を経験しているので、実際の入試問題がどのようなものかをイメージできています。つまり、最終的に解くべきゴールとなる問題をイメージし、そのゴールを目指して勉強できるので、努力の方向性を明確にしやすいのです。
しかし、現役生はそのゴールイメージがないため、努力の方向性を間違えてしまう危険性があります。もちろん、最初の過去問演習の時点では合格点とのギャップがかなり大きい状態かもしれません。問題を解くのに時間がかかりすぎて、制限時間内では半分も解けないかもしれません。それらも含めて、合格点にどれだけ足りないのか、何を克服しないといけないのかといった、自分の課題を明確にしましょう。それを克服することを意識して入試実践レベルの問題集や出題形式別の問題集、特定単元に特化した問題集などを選び、実践的な演習(応用レベル演習)を積み重ねるための計画を立てることが大切です。
下記の図では8月に1回目の過去問演習で、自分の志望大学合格に向けた課題点を洗い出し、9月以降の応用レベル演習の計画を立てる際に生かすというスケジュールになっています。応用レベル演習に入ってからは、月に1回程度のペースで過去問演習に取り組み、学習計画を実行した成果が表れているかを効果測定し、この先の学習計画を軌道修正します。そうすることで、最短で合格するための学習計画がブラッシュアップされるはずです。

医学部入試に詳しい先生や先輩に話を聞いてみよう
参考書や問題集を選ぶ場合、志望大学に合格した先輩がいれば話を聞いてみると良いでしょう。私が教務統括を務めるメディカルラボでは医学部入試に精通したプロ講師が指導しているので、志望大学の対策にどの問題集を使えば良いのかなど、具体的にアドバイスできます。
医学部入試に詳しい先生が高校にいれば、もちろん先生に聞くのも良いでしょう。志望大学のレベルや出題内容、出題形式に合った問題集が見つかれば、非常に効率的です。
受験生の中には、むやみやたらにいろいろな参考書や問題集に手を出す人や、難しい問題集を選んでしまい、理解が不十分のまま解法を丸暗記しようとする人もいるようですが、これでは必要な力がつきません。
まずは基礎固めとして、自分の学力状況に合った問題集を1 冊選んだら、それを何度も繰り返して解きましょう。あれこれ手を広げるよりも、1冊の問題集を確実に理解することが得点力のアップにつながるのです。問題集は、載っている問題を解けるようにするためだけでなく、問題の解法を理解するために取り組むものです。したがって、問題集を選ぶときは、必ず手に取って、解説が丁寧でわかりやすいものを選ぶことが重要です。
基礎固めが十分にできたら、思考力・応用力を養成するための問題集に取り組みます。もちろん、志望大学の出題傾向に合わせた問題集を選びます。
例えば、英語の長文では、出題される英文の長さが目安になります。問題集には『やっておきたい英語長文500』 、『やっておきたい英語長文700』 、『やっておきたい英語長文1000』 (いずれも河合出版)など単語数が書いてあるものや、『1日20分の英語長文15』 、『1日40分の英語長文10』(いずれも河合出版)など時間の目安を表示したものもあり、志望大学の長文の長さに合わせた問題集を選ぶことができます。
ただし、長文の内容が、「理系の分野に偏っている」 、「医療系の分野から出題されやすい」というように、傾向がはっきりしている大学が多いので、『私立医大の英語[長文読解編]』 (教学社)などの長文の問題集も参考になります。
英文法や語法問題がよく出る大学については、英文法の問題集として知られる『Next Stage(ネクステージ)』 (桐原書店)や『GRAMMAR MASTER(グラマスター) 』(Z会)などの基本的な問題集を仕上げたあとで、受験直前には単元の区割りがない『全解説実力判定 英文法ファイナル問題集』 (桐原書店)や『ランダム総点検 英文法・語法 最終チェック問題集』 (旺文社)で実践的に実力をチェックすると良いでしょう。

可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括