丸暗記では太刀打ちできない…医学部化学を攻略!〈応用力〉をつけるための3ステップ【メディカルラボが解説】

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丸暗記では太刀打ちできない…医学部化学を攻略!〈応用力〉をつけるための3ステップ【メディカルラボが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

基礎的な化学知識が身についていれば、定型的な計算や反応式の問題には対応できます。しかし、医学部入試では、分子の構造や実験操作の結果をもとに知識を組み合わせる「応用力」が不可欠です。有機化学の構造決定問題や複数操作を含む実験問題など、暗記や計算だけでは解けない問題こそが合否を左右します。医系専門予備校メディカルラボのカリスマ講師・可児良友氏の著書『2026年度用「医学部受験」を決めたらまず読む本』(時事通信社)から、化学の応用力を身につける具体的なステップを紹介します。

化学の基礎固めのところで知識の理解と定着の重要性をお伝えしましたが、医学部入試に対応するためには、さらに身につけた知識をうまく活用することが求められます。

Step1 知識を整理し、組み合わせて使う力をつける

有機化学で頻出の「構造決定問題」を思い浮かべてもらえばイメージしやすいでしょう。構造決定問題とは、例えば物質の分子式CaHbOcが与えられた(もしくは計算により求めた)うえで、さまざまな実験操作の結果からその物質の構造を決定するものです。このような問題を解くためには、

(1)炭素原子Cと水素原子Hの個数の関係性から、不飽和結合・環式構造の有無を調べる。
(2)実験結果などから、物質に含まれる官能基の特定や構造の特徴を把握する。
(3)考えられるすべての構造パターンを列挙する。

といったように、段階を踏まえての検証が必要です。特に(2)の段階においては、複数の知識を思い出したうえでそれらを組み合わせて用いることが求められます。

 

例えば、分子式がC7H14O2で表される化合物Aに対し、「水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、さらに塩酸で処理する」という操作が行われていれば「“加水分解”がおこり2種類の化合物BとC(飽和アルコールと飽和カルボン酸の組み合わせ)が得られる」という結果を思いつかなければなりません。加えて「この操作で生じた化合物Bに対してヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、さらに塩酸を加えると、黄色の沈殿および化合物Cが生じた」という結果があれば、


①「化合物Bに対し“ヨードホルム反応”がおこった」 ⇒「CH3-CH(OH)-の構造を持つ」
②「化合物Cが生じた」 ⇒「化合物Cは化合物Bよりも炭素原子が1個少ないカルボン酸である」


と続きます。

 

以上より、化合物Aは「プロピオン酸CH3-CH2-COOH(化合物C)と2-ブタノールCH3-CH(OH)-CH2-CH3(化合物B)からなるエステルである」とわかります。

 

このように複雑な処理手順とそれに対応できるだけの思考力・判断力が必要となるため、有機化合物の構造決定問題は医学部入試ではよく出題されます。さまざまな問題集に数多くの問題が掲載されているので、それらに取り組みながら考え方を身につけていきましょう。その際に意識してほしいのが、「知識を整理すること」そして「それらを組み合わせて使うこと」です。

 

また、近年では、選択式の問題で「すべて選べ」という形式の設問が増えています。複数の単元・項目にわたって選択肢が作られることも多いうえに、「該当する選択肢がない」という答えが正解というケースもあります。これらの設問では、選択肢を1つだけ選ぶ問題とは異なり「何となく選ぶ」という解法は通用しません。それぞれの単元の知識を正確に覚えることはもとより、関連する項目と組み合わせて理解し、設問に対して確実に知識を引き出せるようにトレーニングを積むことが重要です。

 

Step2 情報を整理し、必要な知識を選択してあてはめる力をつける

基礎レベルの問題と異なり、入試で出題される応用問題では、問題の文章(リード文)が長くなります。基本~標準レベルの実験を題材にした問題では、1~2つ程度の操作のみですが、応用問題では複数の操作が行われるため、状況の把握自体が難しくなります。また、操作の数だけ実験後の状況やその結果の数値が記載されることになります。

 

こうしてリード文が長くなり、受験生を苦しめるのです。加えて、化学の問題では出てきた数値をすべて使うわけではありません。解を求めるために必要な数値を見極め、有効数字を意識した複雑な計算処理をしていく必要があるのです。このような長いリード文を伴う問題に対応するためには、それなりの工夫が必要です。

 

例えば、複数の操作が行われている場合には、それらを短い文章や図などを用いて箇条書きにすると良いでしょう。その操作の目的を検証し、あわせてメモしておくと、後で見返したときに把握しやすくなります。

 

出所:可児良友著『2026年度用「医学部受験」を決めたらまず読む本』(時事通信社)
出所:可児良友著『2026年度用「医学部受験」を決めたらまず読む本』(時事通信社)

 

また、化学反応においては、その内容を化学反応式で表し、反応物・生成物それぞれについて、その質量や体積・物質量(mol数)といった関連する数値データを記載しておくと、どれをその後の計算に用いれば良いのか把握しやすくなり、解法の筋道を立てやすくなります。ぜひ活用してみてください。

 

なお、医学部の入試問題では、ときとして教科書や参考書・問題集などでは見たことのない、受験生にとって未知の物質を用いた反応や実験などをテーマとした問題が出題されることがあります。これらは、化学知識が豊富な一部の受験生だけが解答できる問題なのでしょうか。いいえ、違います。これらの問題はたとえその物質についての知識を持っていなくても、リード文に与えられた情報と教科書等で学んだ知識とを組み合わせることによって、必ず解を求められるように設計されているのです。

 

つまりは、受験生の「知識を活用する力」を測るための問題なのです。このような問題に対応するためには、まずは諦めないこと、そして自分が学んで身につけた知識の中から何が使えるのかを考え、それらを問題にあてはめながら地道に解答への糸口をたどっていくことが重要です。このような取り組みは、入試本番で初めて実践しようとしても不可能です。必ず過去問演習などを通して、練習の段階で試行錯誤する経験をしておいてください。

Step 3 良質な問題を繰り返し解く

ここまで化学の応用力として2つの項目を挙げましたが、これらを身につけるためには良質な問題を用いた演習が欠かせません。そのためには、『実戦 化学重要問題集』(数研出版)や『化学基礎問題精講』(旺文社)などを用いると良いでしょう。古くからある問題集ですが、毎年少しずつ問題が差し替えられています。解説がしっかりしており、入試を突破するために解けるようにすべき問題に対して、確実に解く力を養成してくれます。1周で終わらせず、2周、3周と繰り返す価値のある問題集です。さらに、化学が得意科目で、得点源に仕上げたいという人は、『化学標準問題精講』(旺文社)や『理系大学受験 化学の新演習』(三省堂)にも取り組みましょう。

 

ただし、ここに挙げた問題集はあくまでも一例であり、この他にも良いものが数多くあります。受験大学の出題レベルや出題形式に合わせ、解答・解説が自分にとってわかりやすい問題集を選ぶことも大切です。

 

なお、これらの問題集を用いて応用実践力を鍛える際には、次の2点に注意してください。


1つ目は、基礎固めの際に習得したはずの知識や考え方を忘れていないかをチェックし、忘れていた場合は、基礎固めのときに用いた教科書や参考書に戻って理解し直すことです。その際に、丸暗記ではなく原理・原則の理解を心がけることが重要です。


2つ目は、新しい知識や考え方、発展的な内容(のちのち忘れてしまってもかまわないので)をいったんは習得するつもりで貪欲に学習することです。そのためには、『理系大学受験 化学の新研究』(三省堂)を辞書代わりに常備し、気になる部分を調べることで、新しい知識を習得し理解を深めるための手助けとしてください。このレベルまで化学の学習を実践できた受験生は、入試本番で間違いなく合格に必要な点数を獲得できるでしょう。

 

出所:可児良友著『2026年度用「医学部受験」を決めたらまず読む本』(時事通信社)
出所:可児良友著『2026年度用「医学部受験」を決めたらまず読む本』(時事通信社)

 

可児 良友

医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括

 

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