老後への不安や将来への備えとして、投資への関心が高まる現代。その裏側で巧妙化する投資詐欺が深刻な問題となっています。SNSや知人からの紹介といった身近な経路を悪用し、一見魅力的な話で人々を陥れる手口は後を絶ちません。本記事ではAさんの事例とともに、投資詐欺手口とその回避策について、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
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投資詐欺で見落としがちな落とし穴

高利回りには必ず高リスクが伴う

投資の基本原則として「ハイリターン=ハイリスク」であることを忘れてはなりません。元本保証で高利回りなどという話は、まず詐欺を疑うべきです。

 

 金融機関の真偽は金融庁の登録一覧で確認

社名や担当者の所属については、金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」などの公的なデータベースで、自ら必ず確認することが大切です。

 

その場で決断しない、家族や第三者に相談する

詐欺師は「特別なチャンス」「いまだけ」といった言葉で急かし、冷静な判断を奪おうとします。さらに、相談させないように巧妙な言い回しを使います。

 

詐欺の電話では、次のような言葉が使われていました。

 

「これは内部情報なので、ほかの人に相談して話してしまうとインサイダー取引になります」

→ 知らない人に話すと違法になるという恐怖心を与え、相談を封じ込めようとしています。

*相談することが違法なのではなく、内部情報を利用して売買を行うことがインサイダー取引に該当します。

 

「投資のためにお金を借りると『なにに使うか』理由を聞かれるので、手元にあるお金だけにしてください」

→ ほかの人に相談する機会を作らず、手持ちの貯金で早めに入金させようとしています。

 

「相談するなら、私だけにしてほしい」

→ 詐欺師自身を唯一の信頼できる存在に見せ、第三者からの客観的な助言を遮断しようとしています。必ず家族や信頼できる第三者に相談しましょう。消費生活センターや金融庁の相談窓口も積極的に利用してください。

信頼できる情報源をもとに、堅実な資産形成を

将来の不安を解消しようと始めた資産運用が、詐欺によって生活を破綻させてしまうような事態になっては本末転倒です。詐欺の手口は常に進化しており、SNSやネット広告、電話勧誘など、身近に潜んでいます。そして、どの年代の人も例外なくそのターゲットになる可能性があります。

 

「自分も騙されるかもしれない」と意識し、いま一度「本当に信頼できる情報か?」「冷静に判断できているか?」と自問しながら、堅実な資産形成を目指しましょう。

 

〈参考〉

※1 金融庁「免許・許可・登録を受けている業者一覧」

https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kinyushohin.pdf

※2 金融庁 無登録で金融商品取引業を行う者に警告し、その名称等を公表しています。

https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku/04.html

※3 警視庁「SOS47特殊詐欺対策ページ『手口一覧とその他の対策』」

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/special/

 

 

伊藤 江里子

FP事務所 夢咲き案内人オカエリ 代表