糖尿病専門医である大坂貴史氏によると、糖尿病を持つ人の半数は肥満ではないといいます。やせているからといって、糖尿病にならないとは限らないようです。また、糖尿病の原因が必ずしも“食べすぎ”とは限らないことにも注意が必要です。大坂氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、糖尿病の意外な事実について詳しくみていきましょう。
そ、そんな…身長154cm・体重44kgのやせ型ながら「糖尿病」と診断された52歳女性。原因となった「普段の食事」とは【糖尿病専門医が解説】
食事量が少なく栄養が不足
先生は優しい口調で話してくれたが、私はまだ現実を受け止められない。
それでも、先生の話を聞かないわけにはいかない。
「私はどんな治療を受ければ、治してもらえるんですか?」
「細かい表現の部分で申し訳ありませんが、 治療を受けるというスタンスではなく、治療は横田さんが主体的にされるものです。そして、私は横田さんを治していくのではなく、横田さんが改善されていくお手伝いをします」
そして、またほほえんだ。
「糖尿病の治療は、『食事』『運動』『薬物』の3本柱で行います。そのため、現在の食生活や運動習慣などの日常生活について教えてください」
「……」
「まずは、食事のことからお伺いします。朝食、昼食、夕食を召し上がる時間帯と、どんなものを食べることが多いかを教えてください」
たくさん食べているわけではない食事について話すことが必要なのか理解できなかったが、私の食事量に問題がないことを認めてほしくて、ありのままを話した。
「朝は8時くらいに食べます。だいたいパンとコーヒーです。きゅうりをつけることもあります」
「パンはどんなものをどれくらい召し上がりますか?」
「デニッシュが好きで、それを1個食べるくらいです」
「なるほど。砂糖がまぶしてあったり、チョコが入っていたりするものですか?」
「りんごと多少クリームが入ったものが多いです。おいしいんですよ」
「なるほど。お昼は?」
「パートがある日は、勤務先のスーパーでお弁当を買っています。ただ、量が多くて、全部は食べきれなくて。もったいないけれど、残すことが多いです。もう少し量を減らして売っていればいいのに、といつも思います」
「はは、そうですね。ご自宅で食べる日は?」
「冷凍のピザかうどん、チャーハンのうちのどれかが多いです。でも、そのほかには食べていないし、食べすぎということはないと思うのですが……」
「わかりました。お昼を召し上がる時間は?」
「だいたい12時半くらいです」
「間食はしますか?」
「3時くらいには疲れてしまうので、休憩しておやつを食べます。よく人からもらうんです。ただ、小さなお菓子を3つまでにしています。太りたくないので」
「例えば、どんなものですか?」
「クッキーとか、バウムクーヘンとか、パイとかが多いかしら。でも、スーパーでよく見かけるミニアソートタイプの、小ぶりのやつなんですよ」
「そうですか。では、夕飯についても教えてください」
「夕飯は炒め物が多いです。肉野菜炒めとか。でも、私はお肉が得意じゃないので、野菜を選んで食べています。あとは、ご飯とおみそ汁。夫はよく食べる人なので、私の分はそれほど多くないはずです」
「おかずは1人前ずつに分けてよそっていますか?」
「いえ、大皿というか食卓にそのまま出せるフライパンを使っていて、そこからお互いが食べられる量を取る感じです。だから、私は少ないんです」
「わかりました。では、少しずつ食事を見直すポイントを考えていきましょう」
「そんなに食べていないのに、見直しが必要なんですか?」
「そうですね。食べていないことで栄養不足になっているのかもしれません」
〈先生からの処方箋〉
食事量は少なければよいというわけではない。
栄養不足が体に不調をもたらす!
大坂 貴史
糖尿病専門医・指導医
総合内科専門医