食生活が乱れることで栄養不足になり、筋肉が減ることで、糖尿病を進行させる悪循環を引き起こすことがあります。また、これは便秘や冷えの原因にもなるのだとか。糖尿病専門医である大坂貴史氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、サルコペニア肥満について詳しくみていきましょう。
やせているけれど体脂肪率の高い「隠れ肥満」が発症しやすい〈サルコペニア〉の危険性【糖尿病専門医が警告】
〈本記事の登場人物〉
横田みずほさん(52歳・女性)
1児の母。冷え性が悩み。糖尿病の疑いがあるという検査結果を受け、治療を進めていくことにした。朝はパン1つとコーヒーだけで済ませるなど、食生活に問題はないと考えていたが、「栄養不足かもしれない」と告げられる。さらに、「筋肉不足で血糖値が高くなっている」という医師の説明に驚きを隠せない横田さん。
筋肉が減る 「サルコペニア」 とは?
たくさん食べるから、血糖値が高くなるんじゃないのかしら?
変なことを言う先生だと思って怪訝な顔をしたが、先生は質問を続けた。
「横田さんは、運動の習慣はありますか?」
「仕事で少し体を動かす以外は、運動らしい運動はしていません」
「“便秘”や“冷え”の症状はありませんか?」
「はい。そうですね。冷え性だと思います。手足が特に。便秘はもう昔からなので、私の体質みたいなものだと思っています」
そして、先生は再び検査数値に視線を戻した。
「横田さんは、筋肉量が少なくなる『サルコペニア』の予備群で、やせているけれど体脂肪率が高いことが、インスリンの効きを悪くしているのかもしれませんね」
「サルコペニア……ですか?」
「サルコペニアは、加齢により筋肉量の減少、筋力の低下、身体能力が低下した状態のことです。ギリシャ語で筋肉を意味する“サルコ(sarco)”と喪失を意味する“ペニア(penia)”の造語です」
「そうなんですね。聞いたことはありますが、意味は知りませんでした」
「サルコペニアの基準の1つに、四肢の筋肉量(㎏)を身長(m)の2乗で割った“SMI(Skeletal Muscle mass Index)” という骨格筋量指数があります」
「はい」
「女性では、SMIが5.7未満だと基準の1つを満たします。横田さんは4.7でした。もう1つの基準となる“握力”は19㎏。18㎏未満だと“サルコペニアの疑い” になるので、ギリギリ上回っているレベルです」
「筋肉が少ないと、何か問題があるんですか?」
「サルコペニアになると、バランスを取りにくくなって転倒しやすかったり、体が弱くなっているため、けがや病気になったときに回復が遅くなります」
「何となくイメージできます」
「筋肉が熱を生み出すので、筋肉が少ないと冷えやすくもなります。また、手足だけでなく、口の筋肉なども含めた体全体の筋力も衰えてしまいます」
「それから、筋肉が少ないと血糖値が上がりやすくなります」
「えぇ!? そうなんですか?」
「ちなみに男性では、SMI7.0以下、握力28㎏未満だとサルコペニアと判断されます。横田さんは現状サルコペニアではありませんが、このまま放置すればサルコペニアになる可能性がある“予備群”というわけです」
〈先生からの処方箋〉
“冷え”の原因に筋肉不足があることも。
筋肉量が少ない女性は、サルコペニア予防が大事!