なぜ会社に必要な人材が集まらないのでしょうか。少子高齢化で働き手が不足しているから? 潤沢な広告予算がないから? 地方に拠点を置いているから? ――問題の本質はそこではないかもしれません。特に「物流の2025年問題」突入した物流業界では、人手不足は事業継続を左右する喫緊の課題です。時間外労働の上限規制により、ドライバーの労働時間は短縮され、輸送能力の低下が懸念されるなか、従来の採用戦略ではますます厳しい状況に追い込まれるでしょう。本記事では、菅谷信一氏の著書『動画とAIで変わる最新人材採用術(人材難、採用難を乗り切る新常識!)』(スタンダーズ株式会社)より、広告に頼らない新たな採用戦略の可能性を解説していきます。
「配送ドライバー」が集まらない…頭を抱える運送業界社長が「2,000万円」をドブに捨てた理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

持続可能な採用手法

横田さんに提案した「ゼロ円採用」は、実践的で手軽に始められる方法であることが最大のポイントでした。中小零細企業が限られた人手や資源の中でも効果的な採用を行うためには、広告に頼らない現実的な手法が必要です。

 

私は、どれだけ理論が正しくても、実践が難しく、莫大なコストや時間がかかる方法は、絵に描いた餅に過ぎないと考えています。「ゼロ円採用」では、動画を活用し、広告費をかけずに自社の魅力を伝えることが可能です。これは忙しい社長でも休憩時間の数分で行える簡単な手法であり、すぐに習得でき、継続も難しくありません。この「現実的で無理のない方法」を横田さんが理解し、実践したことが、最終的に成果をもたらしました。

 

1年間で35名のドライバー採用に成功

横田さんは、私がアドバイスした「ゼロ円採用」戦略をしっかりと理解し、戦略に含まれる細かなノウハウや戦術もきちんと実行に移しました。そして、ただ始めるだけでなく、継続的に取り組んだことで、1年間で35名のドライバー採用に成功するという大きな成果を収めたのです。これは、広告費2,000万円を投じても採用ができなかった過去から大きく前進し、持続可能な採用力を築くことにつながりました。

採用に対する固定観念からの脱却

横田さんの劇的な変化の背景には、まず「思考の変化」がありました。採用に対する固定観念や中小零細企業特有の誤解から脱却し、採用に関する新たな視点を持つことができたのです。

 

これは「採用には広告費をかけるのが当たり前」という先入観にとらわれていた横田さんにとって、大きな意識転換となりました。横田さんがもし私と出会わなかったなら、この誤解に気づかないまま、毎年700万円という大金を浪費し続けていたかもしれません。そして、採用ができないことによって会社の成長が滞り、最悪の場合、事業存続の危機にも陥っていた可能性があります。中小零細企業にとって、正しい情報や戦略がいかに重要かということを、私自身も横田さんの歩みから実感したのです。

 

 

菅谷 信一
株式会社アームズ・エディション 代表取締役