なぜ会社に必要な人材が集まらないのでしょうか。少子高齢化で働き手が不足しているから? 潤沢な広告予算がないから? 地方に拠点を置いているから? ――問題の本質はそこではないかもしれません。特に「物流の2025年問題」突入した物流業界では、人手不足は事業継続を左右する喫緊の課題です。時間外労働の上限規制により、ドライバーの労働時間は短縮され、輸送能力の低下が懸念されるなか、従来の採用戦略ではますます厳しい状況に追い込まれるでしょう。本記事では、菅谷信一氏の著書『動画とAIで変わる最新人材採用術(人材難、採用難を乗り切る新常識!)』(スタンダーズ株式会社)より、広告に頼らない新たな採用戦略の可能性を解説していきます。
「配送ドライバー」が集まらない…頭を抱える運送業界社長が「2,000万円」をドブに捨てた理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

人手不足に悩む運送会社

約7年前、私のもとを訪ねてきた株式会社アート・プラの横田さんは、運送業界が抱える深刻な課題、つまりドライバー不足に頭を悩ませていました。新たなビジネスチャンスが目の前にあっても、人材不足によりそれを活かしきれない。

 

この人手不足は、業績の停滞を招くだけでなく、長期的に会社の将来性にも暗い影を落としていました。人材を確保するために多額の広告費を投じたにもかかわらず、採用が実現しなかったこの現実は、横田さんにとって大きなショックでした。

 

2,000万円をドブに捨てた

横田さんが抱えていた最大の課題は、「採用は広告で行うもの」という固定観念に基づく思考停止状態でした。横田さんは、年間700万円、3年間で合計2,000万円もの広告費を投入していたにもかかわらず、採用において明確な成果を得られませんでした。この多額の広告費用をかけてもなお結果が出ないことが続く中で、横田さんは「広告を出せば人材が集まる」という思考に陥っていたのです。

 

こうした広告依存の思考に対し、私は「ゼロ円採用」、つまり広告に頼らない独自の採用戦略を提案しました。この戦略では、動画ツールとコミュニケーションツールを活用し、会社の「現実」を求職者に直接伝えることを重視します。

 

広告に頼らない採用戦略を練る

広告費をかけずに自社の魅力を伝えるこの方法は、広告に依存せず、経費を抑えながら採用力を強化できる可能性がありました。また、この提案が営業活動での動画活用と連動している点もポイントです。私は営業活動においても動画を活用することを横田さんに指導しており、すでにその効果を実感していた横田さんに、採用でも同じ手法を取り入れるようアドバイスしました。

 

営業と採用の両面で動画を活用し、会社の「リアルな姿」を発信することで、求職者に対して信頼と興味を抱かせることができたのです。この方法により、横田さんは広告に頼るのではなく、自らの工夫で採用を動かす主体的な思考へとシフトしていきました。