少子高齢化による人材不足が叫ばれるなか、中小企業の採用コストが異常な高騰を見せています。なぜ、採用費は膨れ上がるのか? 人材不足だけが原因ではありません。その背景には、中小企業が陥りやすい構造的な問題があって……。本記事では、菅谷信一氏の著書『動画とAIで変わる最新人材採用術(人材難、採用難を乗り切る新常識!)』(スタンダーズ株式会社)より、採用コスト高騰の実態について解説します。
それで辞めたらどうするの?…新卒1人の採用コストは「平均93.6万円」だが、薬学部卒業生不足に焦りまくるドラッグストア経営者が“薬剤師1人”にかけた「まさかの金額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

毎月支払われ続ける「35万円」

多くの中小企業が、採用において広告会社や紹介会社に頼りきりになっている現状も問題です。普段はコスト管理に敏感な経営者が、採用に関しては「これくらいは当たり前」「みんなこのくらいはかけている」という曖昧な基準で予算を垂れ流していることが多々あります。

 

特に、私が関わった製造業のある社長は、普段から「ボールペン1本、20円でも安くできないか?」という細かなコスト削減を徹底していました。しかし、採用に関しては突然コスト意識が薄れ、毎月35万円もの求人広告費を無自覚に支出していたのです。

 

「社長、反応のない求人媒体に毎月35万円のコストをかけるのは無駄ですよ」 

 

社長「え? しかし、求人にはそれくらいかかるもんだろう? 他もみんなそんなもんだって聞くし」

 

「確かに、求人広告は効果がある場合もありますが、全く反応がないのに続けるのはコストの垂れ流しです。採用も、他の業務と同じように無駄を見直すべきです」

 

社長「……まぁ、そうかもしれんけど、広告をケチって本当に人が来るもんかねぇ」 

 

このように、普段はコストに敏感な経営者であっても、採用に関しては基準が不明瞭なために感覚が麻痺し、「カモ」にされてしまうことが少なくありません。こうした「無自覚なカモ状態」に陥らないためには、採用コストの適正値やその費用対効果をしっかりと把握し、自社に合った手法を見極めることが必要です。

 

 

菅谷 信一
株式会社アームズ・エディション 代表取締役