株式会社リクルート「就職白書2020」における採用の平均費用求人広告会社のデータによると、新卒採用では、大学生の文系・理系を合わせた平均コストが「93.6万円」。これだけのコストをかけても、採用した人材にすぐに辞められてしまっては、企業としても大きな痛手でしょう。採用のツールとしてほとんどの企業が求人広告を利用していますが、実態は悲惨なもののようで……。本記事では、菅谷信一氏の著書『動画とAIで変わる最新人材採用術(人材難、採用難を乗り切る新常識!)』(スタンダーズ株式会社)より、中小企業の採用現場の実態を明かします。
1人採用するのに「平均93.6万円」だが、雇っても即退職…求人広告会社にカモられ放題、自ら蟻地獄にハマっていく「中小企業」【採用現場の悲惨な実態】 (※写真はイメージです/PIXTA)

採用力の欠如が生む「蟻地獄採用」の罠

求人広告に依存する採用活動は、私が「蟻地獄採用」と呼んでいるものです。一時的な人材確保のために多額の広告費を投じても、実際には採用力の強化にはつながりません。このような採用手法を続けると、毎年広告費や紹介料が増加し、コストの負担が増すばかりです。その一方で、自社に適した人材を安定的に確保するための力が一向に育たないのです。

 

さらに、こうした方法で集まった人材は、企業の文化や価値観に共感する「本当に必要な人材」とは限りません。そのため、短期的に離職してしまうリスクも高まります。

 

一度、はまると抜け出せない「無限蟻地獄」

こうして、依存から抜け出せずに繰り返す状況を続けると、「無限蟻地獄」が完成します。果てしない「蟻地獄」の採用活動から抜け出し、持続可能で安定した採用基盤を構築するには、まず求人広告への依存度を下げることが必要です。

 

その上で、企業が自ら採用の方向性を見定め、主体的かつ戦略的な採用活動を行う姿勢が求められます。自社の魅力や強みを伝え、求める人材像を明確にすることで、企業と共に成長し、長期的に貢献できる人材を確保できるようになるのです。

持続可能な「採用力」を強化し、安定的な組織作りを実現するには

求人広告に頼った採用では、企業のビジョンや価値観に深く共感する人材を集めることが難しいのが現状です。条件や待遇だけで判断された場合、仕事内容や職場環境に少しでもズレを感じれば、早期離職につながるリスクが高まります。このような採用で人員は一時的に確保できても、企業と共に成長し、長期的に貢献する「濃い人材」にはなり得ません。

 

ここでいう「濃い人材」とは、私が提唱する、自社の文化やビジョンに深く共感し、組織にとって欠かせない人材のことです。こうした人材を確保するためには、企業の魅力や文化、目指すビジョンを直接伝えることが欠かせません。このように能動的な採用アプローチにより、持続可能な「採用力」を強化し、企業の成長を支える安定的な組織作りが実現するのです。

 

 

菅谷 信一
株式会社アームズ・エディション 代表取締役