中小企業にとって人材獲得は争奪戦と化しています。革新的な技術を持つ企業でさえ、採用活動だけが旧態依然としているのはなぜなのでしょうか? 本記事では、菅谷信一氏の著書『動画とAIで変わる最新人材採用術(人材難、採用難を乗り切る新常識!)』(スタンダーズ株式会社)より、現代の採用現場の実態について解説します。
工業高校の学生がひっぱりだこ!求人倍率「過去最高27.2倍」…やたら目にする「求人広告」、紹介サービスに企業は依存。採用現場の悲惨な実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

高校生1人に対し、求人票27枚…悪化する採用市場の現状

激化する採用市場と中小企業の課題

現代の採用市場は、かつてないほど競争が激化しています。特に中小企業において、この競争は深刻であり、十分な戦略を持たないままでは適切な人材を確保することが困難な状況です。

 

最初に知っておくべきことは、「求人倍率」の急上昇です。これはどの業界においても見られる傾向で、特に工業高校の学生に対する求人倍率は顕著です。全国工業高等学校長協会の調査によると、2024年卒業予定の工業高校生に対する求人倍率は過去最高の27.2倍に達しています。これは、1人の高校生に対して約30社が求人を出している状況を意味します。

 

中小企業が採用で失敗する原因

なぜこのような現象が起きているのでしょうか? それは、企業が人手不足の解消に向けて焦り、戦略を欠いた採用活動を行っているからです。特に中小企業は、人材採用において大手企業と同じような戦略や予算を持つことが難しく、求人広告や人材紹介会社に依存してしまうことが多いのです。しかし、この依存が中小企業の採用失敗を加速させているのです。

 

インターネットがなかった時代の採用活動

私は大学卒業後、日立製作所関連会社にて人材採用を担当してきました。当時、私たちはネットがない時代に手探りで採用活動を行っていました。この経験から、現代の企業がどれほど戦略不足、思考停止に陥っているかがはっきりと分かります。

 

ネットや求人媒体に頼る現代の採用現場を見るたびに、当時のほうがより戦略的であったと感じます。思考を巡らせ、積極的に行動することが欠かせなかった時代だからこそ、成功していたのです。

 

広告依存と紹介会社依存による失敗

中小企業が広告依存や紹介会社依存に頼る理由は明確です。手軽であり外部の専門家に任せることで自社の人材や時間、予算を節約できるという点が大きいでしょう。しかし、これらの手法には重大な欠点があります。それは、企業が受動的な姿勢を取ってしまい、自社の採用活動を他者任せにしてしまう点です。