社会人として、ひとつの区切りになる定年。多額の退職金を手にすることも多く、その大切なお金を前に初めての投資に挑戦する人も珍しくありません。ただし初めて得られた成功体験で有頂天になり、転落していくケースも珍しくないようです。
バカでした…銀行のVIP待遇に舞い上がり、初めての投資も絶好調。「俺って才能あるんじゃない」と浮かれすぎた「退職金2,200万円」60歳・定年教師の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

銀行からのVIP待遇、そして初めての投資の絶好調

林浩一さん(仮名・60歳)は、長年勤めていた学校で定年を迎え、退職金2,200万円を手にして定年を迎えました。静かな老後を楽しみにしていましたが、ある日、転機が訪れます。普段使いしている地元の銀行から声をかけられたのです。担当者は、林さんに向けてこういいました。

 

「退職金を運用して、少しでも増やしませんか?」

 

退職金は老後の生活資金であり、増やすという発想がなかった林さん。というよりも、それまで堅実をモットーに生きてきたので、「投資」とか「運用」といった言葉とは無縁だったのです。少し興味惹かれたそぶりをしていると、「お時間があればご説明します」と、銀行の奥にある部屋に通されました。まるでVIP待遇――少々浮足立った気持ちになったといいます。

 

銀行の説明は投資初心者でもわかりやすく、納得いくものだったといいます。林さんは銀行からの提案にのることにしました。

 

銀行では、退職金専用の高金利定期預金に加え、投資初心者向けの「バランス型投資信託」を提案されます。資産全体のうち300万円をこの商品に回す形で、林さんは初めての投資をスタートさせました。この投資信託は、株式・債券・リートなどに分散投資されており、リスクを抑えつつ安定的な成長を目指す設計です。投資から半年後、基準価額は順調に伸び、林さんの資産はおよそ10%増加していました。

 

「こんなに簡単にお金が増えるとは思わなかった」

 

初めて「お金が増える」体験をした林さん。「自分には投資の才能があるのではないか」と、自信を深めていきます。「これくらい簡単に利益が出るのなら、他にも大きなリターンを狙える商品があるのではないか?」と考え始め、高利回りの投資商品を自ら探すようになったのです。