少子高齢化が進み、自助努力を求められる時代。老後に生活困窮に陥ってしまう人が一定数いる一方で、計画的な資産形成の成果が老後に実を結ぶ人も。しかし、経済的に豊かな老後のなかでも人生に後悔を残すシニアも多いようで……。本記事ではAさんの事例から、CFPの伊藤貴徳氏が老後の本当の豊かさについて深掘りしていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
俺の人生、一体何だったんだろう…資産1億円・年金月24万円の76歳元部長、入居金数千万円の高級老人ホームに引っ越しも「不幸のどん底」と悔恨の理由 【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

いまからできる“後悔しない人生設計”3選

1.老後資金の準備と同時に、いまの“楽しみ”にも投資する 

将来のために貯蓄することは大切ですが、「いまの自分の人生を充実させること」も忘れてはいけません。 たとえば、「週末の家族との外食」「気になっていた習いごと」「ずっと行きたかった旅行」……それらはすべて、人生を豊かにする“心の投資”です。 

 

「老後の安心」は貯金額だけでなく、人生の満足度でも決まります。「いまが楽しければそれでいい」でも、「老後ばかりを意識して節約しすぎる」でもなく、バランスの取れた使い方を意識しましょう。 

 

2.人とのつながりを築く“社会的資産”を意識する 

お金と同じくらい大切なのが、「人とのつながり」という“社会的資産”です。老後における孤独や不安は、お金があっても消せません。Aさんが感じたように、周囲と話せる話題、共有できる思い出があることが心の豊かさにつながります。 地域のサークルに参加したり、旧友と再会したり、SNSで趣味仲間と交流したり、さまざまな選択肢があります。

 

自分から一歩踏み出してつながりを作ることは、未来の自分への最高の贈り物です。

 

3.「やらない後悔」を減らすためにライフイベントを設計する

人生には限りがあります。 「本当は挑戦してみたかった」「もっと家族との時間をとっておけばよかった」……そんな“やらなかった後悔”は、老後になってから強くのしかかってきます。 やりたいことを「いつか」と先送りにせず、ライフプランのなかに具体的に組み込んでいくことが大切です。 

 

旅行・資格取得・副業・親孝行・引っ越し・結婚……どんなことでも構いません。「やる理由」を明確にすれば、計画とお金の準備がしやすくなります。 

お金以上に重要なこと

「1億円あれば、人生は安泰だ」「老後に困らないように、できるだけ貯めておかなきゃ」そんなふうに、私たちはつい数字で人生の価値を測ってしまいがちです。もちろんお金は大切です。生活を支え、夢を叶え、未来への安心感を与えてくれる力があります。ですがそれ以上に大切なのは、そのお金を「なんのために・どう使うか」でしょう。

 

あなたが笑顔になる瞬間は、通帳の数字を眺めているときでしょうか? それとも、大切な人と食卓を囲んでいるとき、夢中になって趣味に取り組んでいるときでしょうか? 豊かさとは、数字や肩書ではなく、「その人らしい時間」と「満たされた心」に宿るものです。 

 

人生の設計図に心のゆとりは描かれていますか? 資産形成の計画だけでなく、人とのつながり、やりたいこと、家族との時間も含めたプランニングこそが、これからの時代に求められる「人生戦略」なのです。 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表