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副業を持つ会社員が増えるなか、アパート経営などのサラリーマン大家として不動産賃貸による収入を得る人も少なくありません。しかし、給与所得と不動産所得を合算すると税負担が増え、確定申告を怠ればペナルティを受ける可能性もあります。また、住民税や健康保険料への影響、税務調査で指摘されやすいポイントも知っておく必要があります。田中康雄税理士が、これらのリスクと対策を分かりやすく解説します。

税務調査でチェックされやすいポイント

現金収入の記帳モレ

税務調査と聞くと、税務署の職員が自宅まで来て、帳簿などをチェックしていく実地調査のイメージが強いかもしれません。しかし、税務署では、税務調査の一環として、前述した「お尋ね」という手法を使った調査も実施しています。具体的には、文書による問い合わせがほとんどですが、税務署側としては、納税者と直接対面する必要もないためストレスは圧倒的に少なく、また、ピンポイントに内容の確認ができるため、便利な調査方法として活用されています。

 

こうした税務署による接触手段がある中で、アパート経営に目を向けると、不動産賃貸はオーナーにとって安定した収入が期待できます。つまり、入居者に異動がなければ、月額賃料の12ヶ月分を年間でしっかりと受け取ることができます。また、数年に1回は定期的に更新料があったり、新たな入居があれば礼金を受け取ったりすることもあるでしょう。

 

このように不動産収入は単純に計算できるため、税務署側でも収入の計上モレを発見することはそれほど難しいことではありません。最近では申告モレになりやすい手渡しで家賃を受け取ることはほとんどないかもしれませんが、いずれにしても不動産所得を申告する際には、収入の計上に誤りがないかどうか、申告前にしっかりとチェックしておく必要があります。

経費の水増し申告に対するリスク

税務署の中では、おそらく前年度の申告書を並べながら経費の妥当性などを検討していることでしょう。不動産所得では、屋根の防水工事や外壁塗装などのように大規模な修繕が臨時的に発生する場合を除いては、必要経費の金額が大幅に変動することは少なく、また、経費の中身についても同じような内容のものが毎年繰り返される傾向にあります。そのため、アパート経営においては、収入と同じように支出する必要経費も安定しているといえるでしょう。

 

そう考えると、その年だけの突発的な経費の増加や、交際費などのような不動産賃貸には不相応な経費が巨額に計上されていると、税務署からの「お尋ね」の対象になりやすいといえます。そして、これにうまく応答できず申告を修正させられたことで課せられるペナルティは、必要経費に含めることはできず、また、たとえこれが少額であったとしても余計な出費となってこれまで蓄えてきた自身の大切な財産が削られてしまいます。節税に向けた取り組みが必ずしも否定されるわけではありませんが、過度な節税はかえって逆効果になってしまうということも忘れないようにしておかなければなりません。

 

田中康雄

税理士