「何もせずに銀行に預けておくなんてもったいない」
大金を手にした65歳男性が感じた焦りと不安

「この歳になって、こんな大金をどう扱えばいいのか……」

吉田泰三さん(現在65歳・仮名)は、自宅のリビングでため息をつきながら資産明細をじっと見つめていました。5年前に妻を亡くし、2年前には父親が他界。さらにその3ヵ月後、長年勤めた製薬会社を定年退職。不動産を含めて8,000万円の遺産と退職金2,000万円、計1億円を手にしました。

税金の支払いなどを済ませた結果、手元の蓄えと合わせて6,000万円(別途、不動産3,500万円)が手元に残りました。

「このお金、ただ放っておくだけではもったいない。子どもたちにもできるだけ多くの遺産を残したいから、自分が生きているうちに少しでも増やしておかないとな。でも、銀行に預けてもまったく増えないし、どうしたものか」

吉田さんは退職直後、銀行から特別金利の定期預金(3ヵ月、1.7%)を紹介され、退職金全額を預け入れました。しかし満期を迎えると通常の金利は年0.01%に。100万円預けても得られるのは年間わずか100円です。

テレビでは、「インフレで現金の価値が下がる」「資産運用の重要性」といった話題が取り上げられています。何もしなければ増えるどころか将来的に価値は減ってしまう。そんな情報に煽られるように、吉田さんは「このお金を放っておけない、なんとかしなければ」と焦りを募らせていました。

そんな中、吉田さんの目に飛び込んできたのは、新聞の折り込みチラシの「退職金の賢い運用術 無料セミナー」という文字でした。