家族の遺産や退職金で1億円の資産を手にした吉田泰三さん(仮名)。「このまま置いていてはもったいない」……この思いが、吉田さんを危険な投資の世界へと誘いました。しかし、理解しきれない金融商品と周囲に相談できない孤独が、彼を大きな損失へと導いたのです。一見順調に見えた投資が、なぜ大きな損失につながったのか? 60代の皆さんが資産を守りながら活用するヒントをFPの青山創星氏が詳しくお伝えします。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私、なんでこんなことをしたんでしょうか…遺産と退職金で「1億円」を手にした65歳元会社員。「このお金、放っておけない」焦りが生んだ、まさかの結末【FPの助言】
「昨日までの利益がすべて消えました」—世界情勢の急変で海外債券と株式証拠金取引で2,000万円以上が蒸発
「吉田さん、信用取引って知ってますか?自分の資金の3倍まで株を買えるんですよ。同じ値上がりでも、3倍の利益が得られるんです」
岡田さんは自身のスマホ画面を見せながら続けました。
「私はこの半年で1,000万円を3,000万円にしましたよ。半導体関連株がまだまだ上がると見ています」
信用取引の仕組みについて、証券会社の担当者からも「保証金を預けて、その何倍もの株を買える仕組み」と説明を受けました。ただし、「株価が下がると追加の保証金(追証)が必要になることもある」という説明は、吉田さんの期待に満ちた耳には届いていませんでした。
「なんて効率的なんだ。これなら子どもたちにも十分な遺産を残せる」と驚いた吉田さんは、まず1,000万円の保証金で3,000万円分の半導体関連株を購入。最初の1ヵ月は順調で、800万円ほどの評価益が出ていました。
しかし、ある日突然株価が急落。一週間で保有株の価値は半分近くに。証券会社から「追加保証金が必要です」という連絡が入ります。
追加で1,000万円を入金しましたが、株価は底打ちせず。わずか3ヵ月の間に、海外債券と株式とで2,000万円以上が蒸発していました。
「こんなはずじゃなかった……なぜこんな判断をしてしまったんだろう」