年金分割とは、離婚をした際、婚姻期間中に夫婦が納めた厚生年金の実績を、「多いほうから少ないほうへ」分割して分ける制度です。夫のほうが稼いでいる(年金を納めている額が多い)場合、妻側は「夫の年金の50%を受け取れる」と考えるかもしれません。しかし、この考えは誤りです。年金ルールの注意点について、とある夫婦の事例をもとにみていきましょう。
年金は75万円増えるはずじゃ…77歳女性の誤算。離婚後の年金受給額が「想定よりも30万円少なかった」まさかの理由【社労士CFPが「年金分割の注意点」を解説】
我慢の限界…77歳にして離婚を決意した女性
都内に住むヨウコさん(仮名・77歳)。20代で会社員として働いたのち、夫・オサムさん(74歳)と結婚。その後はオサムさんの扶養に入っていた時期もあれば、パートタイマーとして働き厚生年金に加入していた時期もありました。
一方、夫のオサムさんは絵に描いたようなモーレツ社員。定年後も再雇用で70歳まで働き続け、家族を養ってきました。しかし、そんなオサムさんもついに完全リタイアの時を迎えます。
「旦那が70歳まで働いていたんだから、老後は安泰ね」
周囲からはそう羨ましがられたヨウコさんでしたが、現実は理想とはほど遠いものでした。これまでは「夫は仕事で家にいないのが当たり前」という生活リズムでしたが、夫が毎日のようにリビングにいる生活に、ヨウコさんは言いようのない違和感を覚えるようになります。
やがて、家事のやり方やテレビのチャンネルといった些細なことから諍いが絶えなくなり、ヨウコさんは「離婚」を意識するようになったそうです。
離婚すると「夫の厚生年金の50%」が受け取れる?
77歳という高齢での独り立ち……ヨウコさんの不安は、離婚後の生活費でした。
「今の自分の年金だけでは、一人で暮らしていくのは心許ない……」
そんな時、ヨウコさんは「離婚時の年金分割」という情報を耳にします。
離婚すれば、夫の厚生年金の50%を妻が受け取れる――
ヨウコさんはこの情報を、「夫の厚生年金の半分がそのまま自分のものになる」と解釈したのです。
オサムさんの厚生年金加入期間は45年。それに対し、ヨウコさんの厚生年金加入期間は合計で10年程度です。当然、オサムさんの老齢厚生年金額はヨウコさんよりはるかに高額でした。
「夫の厚生年金が150万円くらいだから、分割すれば75万円は増えるはず。それなら一人でも十分にやっていける」