「夫に先立たれて、こんな生活が待っているなんて…」68歳、年金は月9万円。長年専業主婦の女性が、自営業だった夫の突然の死を機に直面した老後の現実とは? 専業主婦が見落としがちな“収入の落とし穴”と、今からでもできる対策を、FPの三原由紀氏が解説します。

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たったこれだけですか?…年金わずか「月9万円」の衝撃。夫急死で急転直下の68歳元専業主婦、待ち受ける困難の老後に恨み節「夫が死んだら、私の老後も死んだ」【FPの助言】
夫の死により経済基盤が崩壊した68歳・文江さんの現実
「人並みに年金をもらえると思ってたのに、まさかこんなことになるなんて」68歳の佐藤文江さん(仮名)は、夫・信夫さん(享年72)が2年前に急逝して以来、生活に苦しむ日々を送っています。
信夫さんは会社員時代を経て、49歳で独立起業、個人事業主としてハウスクリーニング業を営んできました。自営業として働き続けたことで、厚生年金の加入期間は短く、受給額は老齢厚生年金月4万円ほど(年額50万円)、老齢基礎年金の満額と合わせて月11万円ほどと少なめでした。ただし、事業の収入は安定しており、生活は比較的ゆとりがありました。そのため、将来に対する意識は希薄に。
「貯金? あればいいけど、なくても夫が稼いでいたから特に困らなかったんです。持ち家だし、老後は夫の年金と少しの貯蓄でなんとかなると、漠然と思っていました」
一方、文江さん自身は長年専業主婦。老齢基礎年金はほぼ満額の月6万8,000円(年額82万円)、加えて結婚するまでの短期間の正社員勤務による老齢厚生年金が月8,000円(年額10万円)ほど。夫婦の年金額は月18万6,000円ほどでしたが、自営業は定年もありませんから、信夫さんは年金をもらいながら65歳以降も仕事を続けていました。
昨今の物騒な世の中、家のなかに他人を入れるのは躊躇する風潮も後押しとなり、仕事が丁寧で物腰が柔らかい信夫さんは長年の顧客からの信頼が厚く、紹介も途切れることなく、仕事は順調でした。
気力と体力が続く限り仕事を続けるつもりでしたが、背中の筋肉痛がなかなか取れずボヤく信夫さんを心配した文江さん。嫌がる夫を引きずるように病院に連れていくと末期のがんが発覚、3ヵ月余りで信夫さんは逝ってしまいました。