家族の遺産や退職金で1億円の資産を手にした吉田泰三さん(仮名)。「このまま置いていてはもったいない」……この思いが、吉田さんを危険な投資の世界へと誘いました。しかし、理解しきれない金融商品と周囲に相談できない孤独が、彼を大きな損失へと導いたのです。一見順調に見えた投資が、なぜ大きな損失につながったのか? 60代の皆さんが資産を守りながら活用するヒントをFPの青山創星氏が詳しくお伝えします。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私、なんでこんなことをしたんでしょうか…遺産と退職金で「1億円」を手にした65歳元会社員。「このお金、放っておけない」焦りが生んだ、まさかの結末【FPの助言】
「もっと増やせるかも」という甘い誘惑…親切なアドバイザーとの出会いが悲劇の始まり
セミナー会場は、同じように老後の資金に不安を抱える人々で埋め尽くされていました。セミナー後の個別相談では、特別な部屋に通され、コーヒーを飲みながら話が進みます。
吉田さんはこの日、若くて颯爽とした女性アドバイザー、川島さん(仮名、32歳)と出会います。彼女はファンドラップという運用商品について、詳しく説明してくれました。
「吉田さま、お預かりした資産を複数の金融商品に分散投資するので、リスクを抑えつつリターンが期待できるんですよ。お子さんに残される資産も自然と増えますよ」
川島さんの言葉に、吉田さんは少しずつ心を開いていきました。川島さんは「あなたの資産を守りながら増やすことが私の使命です」と優しく微笑みかけます。
6,000万円以上の資産を持っていることを正直に伝えた吉田さんに、川島さんは「それだけの資産があれば、もっと効率的な運用ができます」と提案。最初は1,000万円からファンドラップを始め、徐々に投資額を増やしていきました。
ある日、川島さんから「安定した利回りが魅力的な海外債券」を紹介されます。「この新興国の債券なら年利7%が期待できるんですよ」と聞き、吉田さんは1,500万円を投資。数ヵ月は順調でしたが、突然の通貨安で大きな為替差損を抱えることに。
減った資産を取り戻さなければと焦る吉田さんに、今度は個別株取引のセミナーが紹介されました。早く手を打たなければ……そう思った吉田さんはもちろん参加。そこで知り合った岡田さん(仮名、58歳)から「効率的に資産を増やす方法」を教えられたのです。