今年も多くの新入社員が社会へと羽ばたいた。しかし、2021年入社の新卒社員の3年以内離職率は約35%に達し、過去15年間で最も高い水準となっている。この背景には企業側と学生側、双方の問題が複雑に絡み合っている。本記事ではAさんの事例とともに、将来を担う若者が抱える経済的不安について、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が解説する。
あんたは勉強ができるんだから…年収350万円の35歳・有名私大卒男性、両親の勧めで「高校2年生のときに下した決断」を猛烈に後悔している理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

学歴インフレ時代…個人の負担軽減と企業の責務

給付金制度の活用

2024年10月から、厚生労働省の教育訓練給付制度における「専門実践教育訓練給付金」が拡充された。これは、社会人の能力開発やキャリア形成を支援する制度で、条件を満たせば受講費用の最大80%が支給される。ぜひこうした制度も自身のライフプランや資産形成に役立ててほしい。

 

学歴インフレと企業の責任

Aさんのように、将来の生活を安定させるために大学進学を選ぶ若者は少なくない。企業の多くが大卒以上を採用条件としている現状では、学歴インフレが進むのも当然の流れといえる。

 

しかし、企業は従業員が奨学金を返済しながら余裕を持って生活できるだけの給与を支払っているだろうか。優秀な人材を確保したいのであれば、学歴インフレを引き起こしている責任を認識し、奨学金返済支援を民間企業としても行う必要があると筆者は考える。

 

奨学金返還支援制度という選択肢

奨学金を借りている人の約6割が利用する日本学生支援機構では、企業による奨学金返還支援制度がある。企業が従業員の奨学金を代理で返済する制度で、従業員の経済的負担を軽減し、仕事へのモチベーション向上や定着率向上に繋がる可能性がある。

 

奨学金返済は個人の問題として捉えられがちだ。しかし、多くの人が社会全体で取り組むべき課題として認識するようになれば、将来を担う若者が抱える経済的不安を軽減させることができるかもしれない。企業による奨学金代理返還制度は、その解決策の一つとなりうるだろう。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者