高齢期の暮らしにおいて、「持ち家=安心」とは限りません。とくに配偶者に先立たれ、収入が一気に減るケースでは、老後設計そのものが揺らぐことも。そんなとき、わずかな支援制度でも「頼れるものがある」と気づけるかどうかが、暮らしの明暗を分けることもあるようです。
もう生きていけない…〈66歳夫〉急逝で〈同い年の妻〉、年金「月7万円」に減額。将来に絶望するも、ある日届いた「年金機構からの緑色の封筒」に救われたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

ある日届いた「緑色の封筒」…その中身とは

「このままでは、もう生きていけない」

 

家は安心の拠り所のはずが、その維持費が、老後の生活設計を圧迫する存在になりつつありました。そんなある日、小野田さんのもとに「緑色の封筒」が届きました。差出人は「日本年金機構」。封を開けてみると、「年金生活者支援給付金」の案内が入っていました。

 

年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金を受け取っている人のうち、所得が一定以下で、かつ住民税非課税などの条件を満たした人に支給される制度です。金額は月に数千円と限られているものの、対象になれば年金とは別に最大で支給されます。給付額は、最大月額5,450円。夫が生きていたころは、世帯収入が基準を上回っていたため対象外でしたが、単身世帯となったことで小野田さんは該当する可能性が出てきたのです。

 

「月最大5,000円……」

 

「もらえないよりはまし」と、給付金の申請について年金事務所に相談に行った際、職員から「お住まいの自治体でも、高齢者向けの住宅修繕支援があるかもしれませんよ」とアドバイスを受けました。後日、市役所に相談したところ、一定の条件を満たした高齢者に対し、住宅修繕費の一部を補助する制度があることがわかりました。

 

「屋根や給湯器の修理が必要だと話したら、見積もり次第で上限30万円まで補助が出ると聞き、正直驚きました。自己負担が3万円で済むとわかって、すぐに申請をしました」

 

年金生活者支援給付金そのものの金額は決して大きくはありません。しかし、その封筒をきっかけに、「制度について誰かに相談すること」ができたことで、結果として抱えていた不安がほんの少し軽減されました。

 

年金が減って生活が苦しい——。それは単に生活費の問題ではなく、持ち家にかかるコストや、将来への不安にも直結します。貧困は社会からの孤立を招きます。今回はたまたま日本年金機構から届いた「緑色の封筒」がきっかけではありましたが、同じように周囲に孤立している高齢者がいないか、注視していきたいものです。

 

[参考資料]

厚生労働省『年金生活者支援給付金制度について』