日本の成人の約5人に1人は「糖尿病」または「糖尿病予備群」だと推計されています。「生活習慣病」の代名詞というイメージもある糖尿病ですが、実は、原因の半分は生活習慣以外にあることはご存じでしょうか? 糖尿病内科医・大坂貴史氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、糖尿病にまつわる“誤解”をみていきましょう。
糖尿病の原因は「食べすぎ」「運動不足」の生活習慣ではない!?…多くの日本人が“避けられない”糖尿病になる原因【糖尿病専門医が解説】
糖尿病の診断基準となる「3つ」の血糖値
先生の力強い言葉に、固く緊張していた心身がほぐれるのを感じた。ここまできたら、この際、恥をしのんで聞いておこう。
「先生、血糖値には空腹時血糖値とか、随時血糖値とか、ヘモグロビンA1cとかいろいろあって、どの数値に注目したらいいのかよくわかりません」
「血糖値にはいくつかの指標があり、それぞれ異なる目的で使われます。診断は総合的に行いますが、簡単に説明しましょう」
「ありがとうございます」
「空腹時血糖値は、食事をとらずに8時間以上経過した状態で測る血糖値のこと。110~125は“境界型”で、126以上だと糖尿病の疑いがあります」
「私は健康診断で118だったので、“境界型”というわけですね」
「次に、75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間後血糖値。75gのブドウ糖を含む液体を飲んで、2時間後に測る血糖値のこと。これが200を超えると糖尿病の疑いがあります。前回の検査で坂田さんが指摘されたものですね」
「じゃあ、随時血糖値は?」
「随時血糖値は、特定の時間や空腹時を問わず、いつでも測ることができる血糖値です。これも200を超えると糖尿病の疑いが強くなります。これら3つの血糖値のいずれかが基準値を超えると、『糖尿病』と診断されることがあります。ただ、先ほども伝えたように基準値以上だから即、糖尿病と診断するわけではありません」
「そうなんですね。わかりました。では、ヘモグロビンA1cは?」
「ヘモグロビンA1cとは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンにブドウ糖が結びついたものの割合です。
この値は、過去1~2か月の平均血糖値を反映した数値、日々の血糖値の上下にかかわらず全体の傾向を把握できるため、血糖値管理や糖尿病の診断で重視しています。6.5%以上だと糖尿病と診断される可能性が高くなるので、この数値は覚えておくといいでしょう」
「では、4つの数値が基準を超えないようにコントロールすればいいのですね」
「ただ血糖値は変動するもので、基準値を1超えたらダメで、1低ければ大丈夫という話ではありません。坂田さんは食後の血糖値を下げることからスタートです。それでヘモグロビンA1cは自然に下がるはずですよ」
〈先生からの処方箋〉
血糖値は常に変動するもの。まずは、食後の血糖値を下げることを目指す!
大坂 貴史
糖尿病専門医・指導医
総合内科専門医