日本の成人の約5人に1人は「糖尿病」または「糖尿病予備群」だと推計されています。「生活習慣病」の代名詞というイメージもある糖尿病ですが、実は、原因の半分は生活習慣以外にあることはご存じでしょうか? 糖尿病内科医・大坂貴史氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、糖尿病にまつわる“誤解”をみていきましょう。
糖尿病の原因は「食べすぎ」「運動不足」の生活習慣ではない!?…多くの日本人が“避けられない”糖尿病になる原因【糖尿病専門医が解説】
〈本記事の登場人物〉
坂田加奈子さん(43歳・女性)
1児の母。職場では課長を務めるワーキングマザー。父が糖尿病を患っていることから健康には気をつけていたが、健診でまさかの「再検査」に。内科クリニックで「OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)」を受けたところ「糖尿病」と診断を受けるも、その後専門医に診てもらったところ糖尿病ではないことが判明。内科クリニックでの“誤診”の原因は、極端な「糖質制限ダイエット」の最中にブドウ糖を摂取する検査を受けたことにあった。しかし専門医は、坂田さんが「糖尿病の一歩手前である“境界型”には該当する」と続ける。
糖尿病になる生活習慣“以外”の原因
「糖尿病じゃなかった!」という喜びの半面、多少なりとも糖尿病を気にかけてきた人間なので、「境界型」というワードにひっかかりを覚える。
いわゆる“糖尿病予備群”というやつだ。薬やインスリンによる治療は必要ないとのことだが、どうすれば予備群を抜けられるのだろうと思いを巡らせていると、先生が言った。
「糖尿病はよく知られているようで、誤解が多い疾患でもあります。坂田さんは家族歴もあるということなので、糖尿病の病態について確認しておきましょう」
「それはありがたいです」
「聞いたことがあるかもしれませんが、『糖尿病』という名称にも誤解を生む要因があります。なぜ、『糖尿病』と呼ばれるか知っていますか?」
「尿に糖が増えるから……ですよね?」
「はい。ただ、必ずとは限りません。尿糖が出ていれば糖尿病の疑いがあるので検査を受けてもらいたいですが、糖尿病の初期では尿糖が出ないケースがあります。だから、診断基準に採用されていないのです」
「確かに。この間も採血検査だけで尿検査は受けませんでした」
「そして、糖尿病がどんな病気かをご存じですか?」
さすがに、それは私にも答えがわかる。
「“血糖値が高くなる病気”だと理解しています」
「そのとおりです。では、どうして血糖値が高くなるのでしょう?」
「糖質の多いものをたくさん食べるから……でしょうか?」
「それもあります。でも、食事だけが糖尿病の原因ではありません。食事や運動、睡眠などの生活習慣が影響するケースもありますが、要因の半分は遺伝的な要素や体質によるものです。だから、糖尿病が『生活習慣病』と位置づけられることも、病気に対する誤解を生じる要因だと思っています」
「そうなんですね。食べすぎや運動不足が原因なのかと思っていました。でも、肥満だと糖尿病になりやすいんですよね?」
「肥満だと血糖値が上がりやすいという相関関係は存在します。ただ、日本人は欧米人のような極端な肥満体型の人はほとんどいませんよね? にもかかわらず糖尿病患者の割合は多いです。専門的には“インスリン分泌能”と言いますが、日本人は血糖値が高くなったときにインスリンを分泌するパワーが欧米人に比べて小さいことが関係しています。これは人種による体質の特性です」
甘いものを食べすぎたから糖尿病になるという、単純な話だけではないことがわかった。