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中間省略登記とは、複数人の間で不動産の所有権などが移転した場合に、中間者を省略して登記することをいいます。現在でもワンルームマンション投資などで一般的に行われている一方で、「違法ではないのか」「トラブルにならないか心配」といった声も多く聞かれます。本コラムでは、中間省略登記の意義や、新・中間省略登記との違い、過去の法改正・裁判例について分かりやすく解説します。

新・中間省略登記の注意点

新・中間省略登記は、法務省によって認められた適法な手続きではあるものの、あくまで例外的な制度であり、利用に際しては注意が必要です。以下では、新・中間省略登記における代表的な注意点について解説します。

 

重要事項の説明義務が果たされない場合がある

新・中間省略登記を行う際、一般的にはB(売主・買主)が不動産会社で、C(買主)が一般消費者になります。宅地建物取引業法では、売主である不動産会社が一般消費者に対して、物件に関する重要事項を説明することなどさまざまな義務が設けられています。

 

しかし新・中間省略登記を用いた取引では、中間に入る不動産業者は物件の売主とはならないため、宅地建物取引業法の規制が及ばなくなります。B(売主・買主)は、重要事項説明義務を負わず、C(買主)が十分な情報を得られない可能性があります。

 

重要事項説明を受けられない場合、物件の権利関係や法令制限、過去の修繕履歴などについて事前に知ることが難しくなるため、契約締結前に自ら調査を行うことが重要です。不動産の購入後に問題が発覚しても、説明義務を負わない業者に対して責任を追及することは困難となるため、慎重な判断が求められます。

 

瑕疵担保責任を追及できないことがある

新・中間省略登記を利用した取引では、契約形態によっては買主が瑕疵担保責任を追及できない場合があります。瑕疵担保責任とは、購入した不動産に隠れた瑕疵(欠陥)があった場合に、買主が売主に対し、代金の減額やリフォームなどの補償を求める権利のことをいいます。

 

このようなリスクを避けるためには、契約の内容を十分に確認し、必要に応じて瑕疵担保責任に関する特約を設けることが重要です。さらに、契約締結前に弁護士や不動産の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

 

詐欺の被害に遭ってしまうリスクがある

新・中間省略登記は、不動産詐欺に利用されるスキームのひとつでもあります。特に「地面師」と呼ばれる詐欺集団が活用する手法としても知られており、過去には積水ハウスが三為契約を利用した取引において巨額の詐欺被害を受けた事件もあります。

 

詐欺ではない場合でも、特に三為契約においては、A(売主)とC(買主)が直接交渉しないため、取引価格の透明性が確保されません。その結果、A(売主)がC(買主)への売却価格を知ることができず、C(買主)もA(売主)からの買取価格を把握できないという問題が生じます。これにより、適正な価格で取引が行われているのか判断することが困難になります。

 

このようなリスクを避けるためには、取引相手の信用調査を徹底し、不審な点がないか慎重に確認することが重要です。また、不動産取引に精通した専門家のアドバイスを受けることで、安全性を高めることができます。

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