新・中間省略登記とは?
不動産登記法の改正により、形式的にも実質的にも禁止された中間省略登記ですが、法務省令(平成19年1月12日法務省民二第52号民事第二課長通知)により、例外的に2種類の中間省略登記が認められています。
2つの方法については(従来の)中間省略登記とは異なる法的構成であるため、厳密にいえば中間省略登記ではありません。しかし「3者以上の取引であるのに、元の所有者と最終取得者しか登記簿に載らない」という点で、「新・中間省略登記」と呼ばれています。
以下からは、新・中間省略登記が認められる2つのケースについて詳しく解説します。
第三者のためにする契約(三為契約)
第三者のためにする契約(三為契約)とは、契約から生じる給付を第三者に対して行うことを債務者に義務づける契約のことをいいます(民法537条1項)。
(第三者のためにする契約)
第五百三十七条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
不動産取引においては、A(売主)と三為業者B、BとC(買主)がそれぞれ不動産売買契約を締結し、所有権を直接A(売主)からC(買主)に移転するようなケースが挙げられます。第三者とは「C(買主)」を指します。
A(売主)はB(三為業者)と、第三者(C)のためにする契約として所有権は直接C(買主)に移転する旨を約します。そして、B(三為業者)はC(買主)との間で、A(売主)の所有権移転先をC(買主)とする旨を約します。
この場合、Bは売買契約の当事者ではありますが、当該不動産の所有者とはなりません。結果として、取引にはA・B・Cの3名が関与するにもかかわらず、登記簿上の所有者としてBを経由しないことから、中間省略登記と類似した状況となるのです。
三為契約は民法に規定のある契約形態であり、取引にかかるコストを軽減できるというメリットがあるものの、取引の流れがあいまいになるなどのデメリットがあります。三為契約に関する詳しい情報はこちらの記事でも紹介していますので、ぜひ併せてご確認ください。
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買主の地位を譲渡する
買主の地位の譲渡とは、売買契約上の「買主の地位」を他者に移転する契約方法です。民法第539条の2に定められた「契約上の地位の移転」という契約の一種であり、契約の当事者が第三者と合意し、相手方がその譲渡を承諾することで成立します。
第五百三十九条の二 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
具体的には、A(売主)とB(売主・買主)が不動産売買契約を締結した後、B(売主・買主)がC(買主)に対して「買主の地位」を譲渡するような場合です。その後、C(買主)がA(売主)に売買代金を支払い、A(売主)からC(買主)へ直接所有権が移転する流れとなります。この方法によって、B(売主・買主)が所有者として登記されることなく、A(売主)からC(買主)へ直接登記を行うことが可能になります。
買主の地位の譲渡は、取引の透明性を確保しつつ、中間コストの削減を実現する手法として活用されています。
