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海外ではGDP比の指標が一般的
国民負担率を海外と比較するときは注意が必要だ。そもそも“国民負担率”という用語は、世界的に使われている言葉ではない。直接対応する英語やフランス語はなく、日本独特の用語だ。
日本では従来、租税と社会保障の負担を国民所得で割り算した数字を国民負担率としている。これに対して、海外ではGDP比でみた租税や社会保障負担の指標(以下「GDP比の指標」と呼ぶ)を用いることが一般的だ。財務省は、OECD(経済協力開発機構)加盟国のデータから、国民所得とGDPをベースにした2つの数字をそれぞれ計算し、各国の“国民負担率”として国際比較を公表している。
国民所得とGDPには、大きく3つの違いがある。国民所得はGDPをもとに算出するが、(1)海外での日本人の所得を加える一方で、国内の日本人以外の所得を除く、(2)設備などの減価償却(固定資本減耗)を除く、(3)価格に上乗せされた消費税などの間接税を除く一方で、値引きに使われたとみられる補助金を加える――といった調整をしている。
このうち、(3)の間接税の税率は、特に影響が大きい。たとえGDPが同じでも、間接税の税率が高いと、国民所得は小さくなる。そのため、GDP比の指標に比べて、国民所得をベースとする国民負担率は高くなる。つまり、間接税率の高い欧州諸国は、国民負担率が高めに算出されやすくなるわけだ。
国民負担率をGDP比でみると、ドイツ、スウェーデン、フランスとの差は縮まる
実際に、GDP比の指標の国際比較をみてみよう。先ほどと同様に2022年の数字で、日本34.9%、アメリカ27.9%、イギリス37.0%、ドイツ41.4%、スウェーデン37.0%、フランス47.7%となる。各国とも国民所得ベースの国民負担率より数字が下がるが、日本の低下幅はドイツ、スウェーデン、フランスよりも小さい。
GDP比の指標は、世界で一般的に用いられているものの、分子と分母の両方に間接税が含まれているため、その影響があらわれにくい。国民所得ベースの国民負担率は、間接税の影響は出やすいが、日本独特の指標となっている。
国際比較の際には、GDP比の指標と国民所得ベースの国民負担率の2つの指標を併用して、多面的に見ていくことが必要と言えるだろう。
![[図表2]2つの指標での国民負担率の国際比較(2022年)](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/e/1/540/img_e103d6796a2fae02aa9809cfd441605e244504.jpg)