国民の所得に対する税負担・社会保障負担の割合を示す「国民負担率」。2024年度の実績見込みは45.8%でした。コロナ禍以降低下を辿ってきましたが、ここ数年で、社会福祉の手厚いヨーロッパ諸国に追いつく数値に迫っています。少子高齢化社会の実態と合わせて注意が必要です。本稿では、ニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏が国民負担率の状況を分析し、現状・課題について詳しく解説します。
国民負担率は45.8%の見込み――高齢化を背景に、欧州諸国との差は徐々に縮小 (写真はイメージです/PIXTA)

潜在的国民負担率はコロナ禍への対応により急上昇したが、その後は低下

国民負担率に、国が抱える財政赤字(対国民所得比)を加えたものは、潜在的国民負担率とされる。租税負担や社会保障負担に、将来世代が負担する財政赤字を加えた、潜在的な負担水準といった意味合いだ。

 

この潜在的国民負担率は、2020年度に62.7%となり、対前年度+13.2ポイントもの大幅上昇となった。コロナ禍への対応で財政赤字が大きく膨らんだことが反映された形となっている。

 

この率は、2023年度には50.0%に低下している。2024年度の実績見込みは50.9%、2025年度の見通しは48.8%と、ピークの2020年度に比べて低下するとみられている。

日本は欧州諸国と比べると低水準だが…

それでは、日本の国民負担率は、諸外国と比べてどうか?国民負担率の国際比較を見てみよう。

 

比較可能な直近のデータとして、2022年(日本は年度(以下同様))の数字を見てみる。日本48.4%(対前年度+0.3ポイント)、アメリカ36.4%(対前年+2.5ポイント)、イギリス49.7%(同+2.1ポイント)、ドイツ55.9%(同+1.0ポイント)、スウェーデン55.5%(同+0.5ポイント)、フランス68.1%(同+0.1ポイント)となっている。この6ヵ国のいずれも上昇しているが、日本の上昇幅はフランスに次いで小さい。

 

ただし、先述の通り、日本は2020年度に前年度から+3.5ポイントもの大幅上昇となっている。2019年から2022年にかけての上昇で見ると、日本が一番高いことに注意する必要があるだろう。

 

日本は、社会保障負担が伝統的に低水準のアメリカよりは高いが、高福祉の欧州諸国よりも低く推移してきた。しかし、近年、日本の国民負担率の伸びは大きい。リーマン・ショック前の2006年からの増減をみると、日本は他の国よりも大きく上昇しており、欧州諸国との差は縮小している。2022年度の実績が48.4%に上昇したことを踏まえると、2023年の比較では、ドイツ、スウェーデン、フランスにさらに迫る水準となっている可能性がある。

 

[図表1]国民負担率の国際比較
[図表1]国民負担率の国際比較 ※財務省の公表資料より

 

次に、潜在的国民負担率について、2022年の数字を比較してみよう。日本54.6%、アメリカ41.1%、イギリス55.9%、ドイツ58.8%、スウェーデン55.5%、フランス74.8%となっている。この6ヵ国の比較では、日本は、イギリス、ドイツ、スウェーデンに迫る水準となっている。世界で最も高齢化が進む日本では、徐々に、租税や社会保障の負担が増しているといえる。