同窓会で級友たちと久々の再会。そこで、今なお羨望の眼差しを送られる「あの同級生」の話題が語れることもしばしば。同級生たちの誇りとして順当にキャリアを重ねているケースもあれば、そうでない場合も珍しくはありません。
あいつ、優秀だったのにな…事務次官は月収100万円超!「エリート官僚」になった東大文一合格・学年一の秀才、その20年後に同級生全員が沈黙 (※写真はイメージです/PIXTA)

輝かしい経歴の果てにあった深い闇

――月収100万円超えかぁ

 

改めて「すごいやつだ」と誰もが思ったとき、参加者のひとりが今の川本さんの状況を知っているといい出しました。

 

――実は川本、3年前に仕事をやめて、今は実家に引きこもっているらしい

 

その言葉に、会場は一瞬静まり返り、誰もが信じられないといった表情を浮かべていました。エリート官僚になったことは誰もが知っていた川本さんが、まさか引きこもりになっているとは……。

 

川本さんが退職した原因は、激務によるメンタルヘルス不調だったとか。国家公務員(官僚)、特に、霞が関の中央省庁で働く官僚たちの仕事は、政策の企画立案、予算編成、法律の制定、国際交渉などと非常に多岐にわたります。連日深夜まで残業し、休日も返上で働くことが珍しくありません。川本さんも、その激務に心身ともに疲弊してしまったのでしょうか。

 

人事院『令和5年度 年次報告書(公務員白書)』によると、上限を超えて超過勤務を命じられた職員(他律部署)は、全体で16.0%、本府省で28.5%。

 

また精神および行動障害による長期病休者数は、2022年度で5,389人で、4年間で1.4倍に増加。全職員の1.92%と、50人に1人の割合になります。さらに年齢でみていくと、20代では1,440人で全職員の2.61%。30代は1,113人で2.01%。40代は1,224人で1.76%。50代は1,471人で1.76%となっています。国家公務員においても働き方改革といわれているものの、業務量や業務の実施時期などを自ら決定することが困難な業務の比重が高い他律部署ではそうはいかず、過重労働、さらにはメンタルヘルス不調に陥りがち。

 

このような状況を受けて、国家公務員総合職試験における東大生の受験者数が右肩下がり、「東大生の官僚離れ」は大きく報道されています。国家公務員のなり手不足解消に向けて、人事院の「人事行政諮問会議」では民間企業に見劣りしない給与水準が必要と指摘、給与改定の仕組みを見直すことを求めたとしていますが、どこまで効果があるのか未知数です。

 

――あいつ、真面目だったからな

 

何ともいえない重々しい雰囲気が同窓会会場に広がったといいます。

 

[参考資料]

人事院『令和6年度 国家公務員給与等実態調査』

人事院『令和5年度 年次報告書(公務員白書)』