1971年~1974年に生まれた団塊ジュニア世代。好景気に沸く中学・高校時代に描いた“明るい未来”とはかけ離れた現実を生きている人がいます。大卒で証券会社に入社し、出世コースを歩んだ河島誠司さん(仮名)もその一人です。ルポライター増田明利氏の著書『今日、50歳になった 悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)より、50代の“生の声”を紹介します。

悔しい…年収300万円“元証券マン”の53歳・契約社員が嘆く〈団塊ジュニア世代〉で「社長になる人」と「時給1200円で働く人」の差【ルポ】
マイホームは諦めた…日給8,500円の副業で、やっと年収300万の暮らし
マイホームはとっくの昔に諦めた。運良く公営住宅に入れたのでずっと住み続けることになるだろう。運転免許は持っているが維持費を賄えないのでずっとペーパードライバー、年に4、5回レンタカーを運転するだけ。お陰でずっとゴールド免許だ。
「クリーニング工場の収入だけでは生活がきつい。なのでゴールデンウイークとかお盆休みの時期は派遣のアルバイトもやっているんです。交通量の調査で幹線道路を走る車を車種別にカウントするとか、大きな駅で利用者を男女別、年齢別にカウントしています」
日給は8,500円だが、年間で20日やれば17万円になる。これがあるのとないのでは懐具合が段違いだ。
「わたしぐらいの年齢になると出世している奴はかなり出世している。地元の大学から地元、地元近隣の公務員になった人は部長級、局長級に出世している人がいる。東京の上位大学に入れた人だと大手企業の取締役とか執行役員に昇進している人もいます」
数年前に祖父の17回忌があり、お寺で親戚たちと久しぶりに会ったのだが、長兄からお前の同級生だった誰それ君は警察に奉職し、どこかの副署長さんになっているとか、〇〇さんの旦那さんはお医者さんで大学病院の准教授になったらしいという話を聞かされて、とても嫌な気分になったことがあった。
「50歳になったときに、どこでどうやって調べたのか高校、大学のクラス会、同窓会の案内状が届いたのですが無視した。中年になってクラス会などに出てくるのは上手くいっている人。大成功じゃないけど失敗はしていない人でしょ。自分は右肩下がりだからね……。卑屈だと思うけど」
全国紙の経済面に載っている会社人事のところを見ると、自分と同じ年齢で上場企業の社長に就任という人もちらほらいる。随分と差がついたなあと思う。
「今更こんなことを考えるのは無意味だけど、もし大学3、4年生に戻って就職活動をやり直せたら公務員やインフラ関連の会社を第一志望にする。さもなければ商学部出身なので税理士や公認会計士を目指して勉強する。職を転々としてきた身ですから安定した仕事が一番だと痛感します」
勤め先が変わるたびに奥さんの機嫌が悪くなり、家庭がギクシャクする。自分自身の僻み根性も増幅する。こんなしょぼいおっさんになるとは思っていなかった。
「最初の証券会社は地元では名の知れた会社だから安泰だ。50代前半で支店長になれるかもと考えていたんですよ」
それが今じゃ薄給の契約社員。期待していた50代とは大違いだ。
増田 明利
ルポライター