満期保険金や解約返戻金額が保険会社の特別勘定での運用実績に応じて増減する「変額保険」。「保障と資産形成を兼ね備えた保険」であるため、一見するとお得に感じるかもしれません。実際のところどうなのでしょうか? 本記事では3人の事例とともに、変額保険の販売手口やセールス対策についてニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
銀行なんて信じたばっかりに…。退職金2,600万円・忍耐強く勤めあげた60歳定年の元会社員、「まさかの真実」を知り大後悔【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

変額保険の問題点と対応策

以上、ご登場いただいた中川さんも森さんも浜口さんも、変額保険を購入できたことに満足していました。しかし、「顧客が満足=よい商品を販売」とは整理できません。

 

変額保険の問題点は、保障と資産運用を組み合わせたことにより販売者側の利益取り分が法外に大きいものになっていることです。このことは、個人でも簡単に検証できます。積立変額保険を勧められた場合にやることは、次の3ステップだけです。
 

①自分用(たとえば40歳男性)に変額保険の「設計書」を作成してもらい、加入期間(たとえば)20年間の総支払金額を計算する。

(例)毎月3万6,000円×12ヵ月×20年間=864万円

 

②その設計書にある特別勘定と呼ばれる資産運用部分の保険満期時の払戻金の「運用益0%」のケースの金額を確認する。

(例)700万円

 

③別途、その設計書と同じ死亡保障金額(たとえば)1,000万円を自分の年齢と性別に基づき、ネットでもすぐに調べられる定期保険の「簡単見積もり」を使って同じ加入年数で試算してみる。

(例)2,800円×12ヵ月×20年間=67万円

 

「①-(②+③)」=「864-700-67」=97万円(総支払額の11%強)

 

この約100万円弱の金額が「死亡保障は掛け捨ての定期保険に加入して、資産運用は別途信託報酬の安いインデックスファンドで運用した場合」との差であり、言い方は悪いですが変額保険販売業者が「追加で自分たちのポケットに入れている分」です。

 

さらにこの計算例では、比較を単純化するために資産運用部分に関しての利回りをゼロベースにしましたが、運用益に利益が出た場合はNISAを使えば非課税で済むのに対して、変額保険では課税されます。最後に登場した浜口さんは「それでも自分が買った変額保険は利益が出ている」といっていましたが、そこはポイントではありません。

 

変額保険ではなく保障と資産運用をわけていれば、上記の例であれば少なくても100万円分はもっと利益が出ていたということなのです。加えてこの実態は、三大疾病保険料払込免除特約や医療や介護の特約を付けるとますますみえにくくなり、「抜かれる金額」も拡大する傾向となります。

 

浜口さんの場合、この事実を後日知り合ったFPから知らされて「銀行なんて信じたばっかりに……。大切な老後資金の一部を養分のように吸い取られた」と大後悔しています。

 

変額保険を勧められた場合は、シンプルな「死亡保障+資産運用分だけのケース」も加えて保険設計書を作成してもらい、上記「検算」をしてみることを強くお勧めします。

 

最後に、解約についても付け加えておきます。資産運用として投資信託を買っている場合はそのときの時価で売却できますが、変額保険の場合は特に10年未満で解約すると高額な「解約控除」という罰金が取られてしまうことにも注意が必要です。

 

 

山田 信彦

ニックFP事務所

代表