満期保険金や解約返戻金額が保険会社の特別勘定での運用実績に応じて増減する「変額保険」。「保障と資産形成を兼ね備えた保険」であるため、一見するとお得に感じるかもしれません。実際のところどうなのでしょうか? 本記事では3人の事例とともに、変額保険の販売手口やセールス対策についてニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
銀行なんて信じたばっかりに…。退職金2,600万円・忍耐強く勤めあげた60歳定年の元会社員、「まさかの真実」を知り大後悔【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

手口2:住宅ローン相談にて変額保険への乗り換えを推奨

森さん(仮名)は39歳会社員の男性です。娘が来年小学生になるので、マイホーム購入の検討を始めました。一方で不安なのは住宅ローンをいくら組めるかという点。

 

そのことを週末に訪れた住宅展示場の営業マンに相談しました。すると、「ご希望の金額を借りることができるか、私どもが提携しているFPにキャッシュフロー表を作成してもらいましょう」と勧められて、さっそく作ってもらうことに。FPは慣れた手つきで森さんの預貯金や収入、毎年の支出のイメージなどをパソコンに打ち込みながらいいました「マイホーム購入後は団信という保険によって森様に万が一のことが起こっても、住宅ローン残高が返済免除となります」。

 

「ですから今後は森様には死亡保障よりも資産運用に力を入れた保険商品がよい感じがします」と続けました。

 

不動産購入や住宅ローン借入額の話で金銭感覚も麻痺してきて、毎月数万円の保険料の支払いがとても小さくみえてきた影響もあったのでしょうか。森さんは住宅ローン借入可能金額の試算までしてくれたFPへの恩義もあり、彼がその場で作成してくれた保険設計書にある積立変額保険への乗換の約束をしました。

 

手口3:定年退職者の特徴を掴んでの変額保険推し

浜口さん(仮名)は定年退職者です。長年サラリーマンとして会社に尽くしてきた対価として、60歳のときに退職金2,600万円を手にしました。

 

今回は浜口さんを担当する銀行の窓口女性が先輩から引き継いだ私的な「変額保険の売り方」メモから見て行きます。そこにはこう書いてあります。

 

60代定年直後の男性は、退職金で預金多し、情報弱者、孤独、医療や介護の特約好き、NISAへの興味が薄い。現役時代の昔話を少し聴いて共感してあげれば簡単に売れる相手。理屈好きそうであれば、生命保険は一定額まで相続税の控除対象になる話も有効。

 

提携している外資系生命保険の販売担当者とタッグを組んで、浜口さんに医療・介護特約付き変額保険を買ってもらうことは簡単でした。また浜口さん自身もこの保険に加入できたことに対して、「これで老後への備えもバッチリだ」とご満悦です。