満期保険金や解約返戻金額が保険会社の特別勘定での運用実績に応じて増減する「変額保険」。「保障と資産形成を兼ね備えた保険」であるため、一見するとお得に感じるかもしれません。実際のところどうなのでしょうか? 本記事では3人の事例とともに、変額保険の販売手口やセールス対策についてニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
銀行なんて信じたばっかりに…。退職金2,600万円・忍耐強く勤めあげた60歳定年の元会社員、「まさかの真実」を知り大後悔【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

変額保険の落とし穴

変額保険は死亡保障を確保しつつ保険料の一部を投資に回す保険商品であり、「掛け捨てではない」「保障と資産運用の両方が可能」とのセールストークで売られています。

 

しかし必要な保障はシンプルな定期保険で対応し、金融資産運用は別途、NISAなどを利用して信託報酬と呼ばれる手数料の低い投資信託で運用するほうがはるかに合理的です。それでも懲りずに今日も変額保険を売る人たちのあるある手口と、その問題点および対抗策をみていきます。

 

手口1:無料NISAセミナーを入り口に変額保険加入に誘導

中川さん(仮名)は昨年結婚した28歳会社員の女性です。いままで投資経験はありません。しかし最近は友人との会話でも「オルカンを始めた」みたいな話題が出ることも多くなり、広告で見かけた「はじめてのNISAセミナー」に申し込みました。

 

それは少人数で開催される女性限定の無料版セミナーでした。講師は優しそうな40代女性で、投資の必要性から始まり、NISAの特徴をわかりやすく解説してくれました。講師の女性から中川さんに翌日電話がかかってきました。「ところで中川さんは生命保険には入っています?」との質問もあり、「そろそろ必要かなと思っていますが、まだなんです。でもNISAも始めたいし、両方はちょっと無理かなあ」と中川さんは答えます。

 

「実はね、中川さん」と講師の女性は続けます。

 

「お若い皆さんは同じ悩みの方が多いんですけど、保障と資産運用が同時にできる優れものもあるので検討してみませんか? よろしければ設計書をお作りしますよ」

 

中川さんは投資目的だけのNISAよりも、保障も兼ねたこちらのほうがよいとの講師からの勧めに応じて、1週間後にその女性が所属する乗合保険代理店にて積立変額保険に加入しました。