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物件の価値を適切に把握することは、不動産投資を成功させるために非常に重要な要素のひとつとなります。不動産の価値を算出する方法には様々なものがありますが、不動産投資では収益還元法が用いられることが一般的です。本コラムでは、収益還元法の概要や計算方法について、具体例を挙げて詳しく解説します。また、他の計算方法との違いや、収益還元法を用いるメリット・注意点も解説します。

不動産投資について
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収益還元法とは?

(画像:PIXTA)
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収益還元法とは、不動産が将来的に生み出す収益(賃料収入や運営利益など)を基に、不動産の現在価値を評価する方法です。

 

不動産の価値を算出する方法にはいくつかの種類がありますが、収益還元法では不動産の価値を「収益性」という観点から把握するため、特に不動産投資や収益物件の評価に適しています。

 

不動産投資における物件の価値は、将来的に得られる賃料収入や売却収入、発生するコストなどによって左右されます。収益還元法を利用することによって、将来収益を現在価値に還元して不動産の価値が把握できます。

 

収益還元法には、直接還元法とDCF法(ディスカント・キャッシュ・フロー法)の二つの手法があります。直接還元法とは賃貸により発生する純収益を一定の割合(還元利回り)で割り戻すシンプルな方法で、短期的な収益物件の評価に適しています。一方、DCF法は将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法で、長期間にわたる収益を割り引くことで、より正確な評価を行う方法です。

 

 

収益還元法以外の計算方法

不動産の価値を算出する方法には、収益還元法のほかにも、積算法、取引事例比較法、原価法などがあります。不動産投資を行う際には、これらの計算方法についても基礎的な知識をもっておきましょう。

収益還元法(直接還元法・DCF法)の計算式と具体例

収益還元法には、直接還元法とDCF法の2種類があり、いずれも収益性をもとに不動産の価値を算出するものではありますが、計算の簡便さや精度に違いがあります。

 

以下からは、それぞれの概要と計算式を、具体例を交えて紹介します。

 

直接還元法の概要と計算式

直接還元法は、1年間の家賃収入を還元利回りで割ることで、不動産の価値を算出する方法です。直接還元法は、収益性を簡単に把握できる点がメリットですが、DCF法に比べると計算の精度はやや劣ります。

 

具体的な計算式は以下の通りです。

 

直接還元法の計算式

不動産価格(収益価格)=1年間の純利益÷還元利回り

 

還元利回りは条件が似ている周辺物件のデータなどを基に設定します。それでは、直接還元法を用いて、実際に不動産価格を算出してみましょう。

 

直接還元法による不動産の現在価値の算出

条件:

  • 年間家賃収入:120万円
  • 年間諸経費:20万円
  • 還元利回り:5%

 

計算:

1年間の純収益=120万円-20万円=100万円

 

現在価値=100万円÷5%=2,000万円
 

以上より、この物件の現在価値は2,000万円と算出されます。

 

DCF法の概要と計算式

DCF法は、毎期得られる純収益と、将来の売却価格をそれぞれ現在価値に割り引いて、合計することで不動産価格を求める手法です。DCF法では複数期間の収益をもとに算出を行うため、計算は複雑になるものの、長期間にわたる収益性を見極めたい場合に有効です。

 

具体的な計算式は以下の通りです。ただし、この式はあくまで簡易的なものであり、実際の不動産評価では、残余価値、複数の期間におけるキャッシュフローの変動、税金、様々なリスク要因などを考慮した、より複雑な計算が行われます。

 

不動産価格の算出方法

不動産価格=年間の純収益の現在価値合計値+将来の売却価格の現在価値

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年間の現在価値の計算式

毎期得られる純収益の現在価値=年間の純収益÷(1+割引率)^n

※nは保有年数

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将来の売却価格の現在価値

将来の売却価格の現在価値=将来の売却時の想定売却価格(復帰価格)÷ (1+割引率)^n

※nは保有年数

 

「現在価値」とは、将来得られるお金を、あたかも今すぐ得られるお金のように、現在の価値に換算した金額のことをいいます。投資では、将来得られるお金よりも、現在得られるお金のほうが価値は高いと考えられているため、将来の価値から割引率(お金の減少率)を差し引くことで現在の価値に換算し、客観的に投資判断ができるようにしているのです。

 

次に、復帰価格とは不動産を売却した際の価格から売却費用を引いた額です。これは将来売却した際に得られる価格を現在の価値に換算した金額のことをいいます。

 

それでは、先ほどの計算式を用いて、実際に不動産価値を算出してみましょう。ただし、今回は計算式を簡略化するため、期間中は純収益の変動がないこととします。

 

DCF法の計算例

条件:

  • 年間家賃収入:120万円
  • 年間諸経費:20万円
  • 割引率:5%
  • 保有年数:5年間
  • 5年後の売却時の想定価格(復帰価格):1,400万円

 

計算:

純収益:120万円-20万円=100万円

 

①年間の純収益の現在価値の合計値

1年目:100万円÷(1+0.05)^1=95.24万円

2年目:100万円÷(1+0.05)^2(2乗)=90.70万円

3年目:100万円÷(1+0.05)^3(3乗)=86.38万円

4年目:100万円÷(1+0.05)^4(4乗)=82.27万円

5年目:100万円÷(1+0.05)^5(5乗)=78.35万円

毎期得られる純収益の現在価値の合計値 =432.94万円

 

②将来の売却価格の現在価値

将来の売却価格の現在価値=1,400万円 ÷(1+0.05)^5=1,097.09万円

 

③不動産価格の計算

不動産価格=432.94万円+1,097.09万円=1,530.03万円

 

この計算結果から、この不動産の現在価値は、約1,530万円と評価されます。直接還元法が単純な収益のみで算出するのに対して、DCF法は将来の価格価値の減少まで加味して算出できます。

 
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