違法建築とは?違法建築の定義と特徴
違法建築とは、建築基準法や地域の条例などの法令に違反して建てられた建築物のことを指します。具体的には、建ぺい率や容積率を超えた建築物、構造が基準を満たしていない建物、あるいは無許可で増改築されたものなどが該当します。
こうした物件は、通常の相場価格よりも安価で取引されていることが多いため、高い利回りで市場に出回っています。しかし、違法建築は購入後に行政から是正を求められたり、安全基準を満たしていないために周辺に悪影響を及ぼすリスクがあったりと、大きな問題に発展する可能性があります。
また、法的には売買や賃貸が可能なため、不動産市場に流通しているケースも少なくありません。不動産投資家にとって、こうした物件を見極める目を養うことが重要です。購入を検討する際は、建物が法律を遵守しているか、十分に確認する必要があります。
違法建築になる主なケース
違法建築になるケースはさまざまですが、主なケースとしては以下のようなものがあります。
・建ぺい率や容積率をオーバーしている
・防火規制に違反している
・接道義務に違反している
・完了検査を受けていない
・違法増築を行っている
建ぺい率や容積率をオーバーしている
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建物が占める面積)の割合で平面的な規則になります。容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合で立体的な規制を指します。
建ぺい率や容積率の制限は、過密な建築を防ぎ、適切な都市環境を維持するために設けられています。例えば店舗や住居が集まる商業地域では、敷地を有効活用するために緩やかな規制となっているのに対し、住宅が集まる住居系では、良好な住環境のために厳しく規制されており、用途地域によって規制内容が異なります。
これらの基準を超過すると、周辺環境への悪影響や防犯上の問題が生じる可能性があります。違反した場合、是正命令や罰則の対象となる可能性があり、不動産取引にも支障をきたす恐れがあります。
用途地域ごとの建ぺい率や容積率の規制については以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説
防火規制に違反している
都市計画によって火災を防止するための建築制限が行われている地域を防火地域や準防火地域といいます。防火地域や準防火地域に指定されている場合、建物を建築するには周囲への延焼を防止するための一定水準の防火性能を備えなければなりません。
また、10㎡以内の増築、改築、移転であっても、他の地域とは異なり確認申請が必要になるなど、厳しい制限があります。
そもそも防火地域や準防火地域では火災を防止するために制限が設けられているので、これらの基準に違反すると、建物や地域の安全性を損なう可能性があり、増築ができなかったり、売却が困難になったりします。
接道義務に違反している
建物が建てられる土地とは、建築基準法で定められた幅員の道路に一定以上接している土地になります。しかし、「建築基準法上の道路」に接していない土地に建てられている場合、接道義務違反となります。この規制は建物の安全性や防犯性を確保するために設けられており、一般的に敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していることが求められます。
接道義務に違反すると緊急車の進入が困難になったり、避難経路が確保できなくなったりするといった命に関わるような問題も発生します。また、建築確認申請が通らず、新築や大規模な改修が困難になることも少なくありません。接道義務違反の是正には、敷地の一部を道路として提供するなどの対応が必要になります。
建築基準法上の「接道」については以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】【第13話】事例から見るシリーズ|建築確認のことと権利の話は、別問題
完了検査を受けていない
完了検査とは、建築工事完了時に確認申請通りの工事が施行できているかを確認する工程です。建築工事完了後に行政による完了検査を受けていない、または検査済証が交付されていない建物が必ずしも違法建築であるとは限らないものの、安全性や法令適合性が確認されていないため、潜在的なリスクを抱えている場合があります。
例えば、構造的な欠陥や安全性の問題があったり、保険の適用外で災害時に保険金が支払われなかったりするといったリスクが考えられます。
違法増築を行っている
違法増築とは、必要な許可や手続きを経ずに建物を増築することを指します。10㎡以上の増築の場合でも建築確認申請が必要となり、これを怠ると違法となります。なお、10㎡未満の増築でも建ぺい率や容積率オーバーとなることで違法建築となる場合もあります。
違法増築は建物の安全性を損なう可能性があるだけでなく、将来の売買や相続の際に問題となる可能性があります。