老人ホームといえば、介護を必要とする人が入る施設というイメージが強いですが、昨今は、安心して暮らせる住まいとして、介護を必要としない健康な人の入居も増加傾向にあります。ただし「老人ホームなら安心」というわけではないようです。
助けて…年金月15万円・78歳母、夜中の23時「老人ホーム」から大脱走。号泣しながら55歳長女に訴えた「衝撃の事実」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

何の心配もない「老人ホームでの生活」が続くと思っていたが…

入居金は200万円で、月額費用は月23万円。年金を月15万円程度受け取っている悦子さん。雑費を合わせたら月10万円ほど取り崩すことになるでしょうか。とりあえず90歳くらいまでは貯金で何とかなりそうです。何よりも、長女の理恵さん宅からも近いのも気に入ったポイントです。

 

【今どきの老人ホーム費用】

■入居一時金

・なし…25.4%

・50万円未満…17.2%

・50万~200万円未満…17.0%

・200万~400万円未満…14.0%

・400万~600万円未満…9.3%

・600万円以上…9.9%

・不明…7.2%

■月額費用

・10万円未満…9.9%

・10万~20万円未満…33.6%

・20万~30万円未満…27.3%

・30万~40万円未満…13.6%

・40万~50万円未満…5.1%

・50万円以上…3.6%

・不明…6.8%

出所:株式会社LIFULL senior

 

――何かあったときに、近いほうが何かといいと思ったの

 

検討に検討を重ねて入居することに決めた悦子さん。一番のメリットは安心感。何かあっても大丈夫という安心感は、ひとりで暮らしていたときには決して抱くことのできなかったものです。ときに長女家族も遊びにも来てくれる……老人ホームでの暮らしはとても充実したものでした。しかし、そんな生活が永遠に続くことはありませんでした。

 

ある日、理恵さん宅の玄関のインターホンを鳴らす人影。時刻は23時……ビックリしつつモニターをみると、そこには悦子さんが立っていました。

 

――えっ⁉

 

慌ててドアを開けて、悦子さんを家のなかに入れます。緊張の糸が切れたのか、突然ボロボロと泣き出します。とりあえず落ち着かせ、「なぜこんな時間に?」と問いかけると、最近のホームの事情を話し出しました。

 

3ヵ月ほど前に施設長が変わりましたが、ことあるごとにスタッフと衝突。入居者の前で大声でいい合うことも。やがてスタッフが大量に離職。明らかに人手不足で、残っているスタッフのイライラが入居者にもわかるくらいに。そしてこの夜、入居者に手をあげるスタッフをみてしまったというのです。怖くなった悦子さんは、思わずホームを飛び出し、気が付けば理恵さんの家の前にいたといいます。

 

――この前、遊びに行ったときはいつもと変わらない、穏やかな雰囲気だったのに……

 

短期間で一変してしまったというホームの様子に言葉を失くす理恵さん。厚生労働省によると、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関するは増加傾向にあり、2022年には相談・通報件数が2,795件、虐待判断件数は856件と過去最多を記録。また相談・通報のうち、住宅型有料老人ホームについてのものが15.9%、介護付き有料老人ホームが12.5%でした。人手不足は増加傾向ある高齢者虐待の一因という見方も。

 

理恵さんがホームに問い合わせると、近いうちに新しいスタッフが補充され、混乱は落ち着くと説明されました。しかし悦子さんのホームへの不信感は拭えず、転居の手続きを進めているといいます。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior『介護施設入居実態調査 2025(お金編)』

株式会社LIFULL senior『介護施設入居実態調査 2025(入居のきっかっけ編)』

厚生労働省『高齢者虐待の実態把握等のための調査研究事業報告書』