
2年ぶりの帰省…そこにあったのは記憶の実家とは違った
「高齢の母をひとりで死なせてしまった」と後悔を口にする横山さん。帰国後、さらにその想いは募ることに。それは2年ぶりに実家に訪れたときのこと。家が見え始めたときからどこか違和感を覚え、近づいてくるにしたがい大きな驚きになっていきました。
――なんだこれは? 何かの間違いではないのか?
そこにあったのは、横山さんが知っている実家ではありませんでした。まるで海外の邸宅のような外構、玄関につづく道には、緩やかなスロープがつけられています。玄関ドアは力のいらない引き戸になっています。家のなかに入ると、玄関の上り口が解消され、段差なくスムーズに家の奥へと進むことができます。水回りは記憶よりも広く、また身長の低い母に合わせて低くつくられています。極めつけはホームエレベーターまで。高齢のひとり暮らし。2階にあがることもそうないだろうに……。
過剰といえるほどのリフォームを果たしていた横山さんの実家。あとで親戚から聞いたところによると、ある日、屋根の点検にとやってきた業者。「このままだと雨漏りがひどくなり、家がだめになりますよ」。それは困ると修理をすると、次から次へとリフォーム業者がやってきては、口車に乗せられ、いつの間にか実家はまるで新築のような佇まいになったといいます。
独立行政法人国民生活センターによると、このような訪問販売によるリフォーム工事・点検商法の相談は近年増加傾向。ひとり暮らしの高齢者が増えていることが一因とされています。
【訪問販売によるリフォーム工事・点検商法による相談件数の推移】
■訪問販売によるリフォーム工事
2021年:9,756件→2022年:1万0,099件→2023年:1万1,861件
■点検商法
2021年:7,435件→2022年:8,165件→2023年:12,510件
――母はカモにされているとわかっていたのでしょうか
母が受け取っていた年金は月14万円ほど。残された通帳にはほとんど貯金も残っていませんでした。過剰ともいえるリフォームにお金を使い果たし……しかし、もしかしたら孤独を埋めるために、カモにされているとわかっていながら話にのていたのではないか……母・洋子さんが人知れず抱えていた孤独感に触れた気がして、ただ涙するしかなかったといいます。
[参考資料]