「定年後の生活に備えて、35年間コツコツ働いてきたのに……」。大手銀行の窓口業務で真面目に勤め上げた金山昇さん(仮名・68歳)を襲った予想外の危機。退職金と貯蓄を投じた不動産投資は、彼の人生を大きく狂わせることに。誰もが陥る可能性のある老後の落とし穴と、その対策法をファイナンシャルプランナー(FP)の青山創星氏が詳しく解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
貯蓄と退職金で3,000万円、年金月31万円で安泰の余生を送るはずだった68歳元メガバンカー。「お金のプロ」が一転、老後破産危機に陥ったワケ【FPの助言】
新しい幸せの形を求めて
金山さんの経験は、老後における「幸せとはなにか」という本質的な問いを私たちに投げかけています。
現役時代のステータスや生活水準にこだわったり、成功者への羨望から背伸びをした生活を続けたりすることは、必ずしも幸せな老後につながりません。むしろ、年金生活者として新たな生きがいや喜びを見出すことが、真の意味での豊かな老後を実現する鍵となるのです。
金山さんの事例からの最も重要な教訓は、老後の生活設計には「意識の転換」が不可欠だということです。高額な趣味や贅沢な交際に依存せず、自分の収入に見合った生活を築くこと。そして、そのなかで新たな喜びや充実感を見出していくことが重要なのです。
金山さんは現在、地域のコミュニティセンターで週に2回、金融教育のボランティア講師として活動しています。
「今のほうが、現役時代より充実していますよ」と笑顔で語る金山さん。「お金の価値は大切ですが、それ以上に大切なのは、その人らしい生き方を見つけることだと実感しています」
確かに、誰もが老後の生活に不安を感じるものです。しかし、その不安を過度な投資や見栄を張った生活で解消しようとするのではなく、自分の収入に見合った新しい生活様式を見つけることが、真の解決策となるのです。
今日から、あなたも「老後の幸せとはなにか」を自問してみませんか? それが、安定した老後生活への第一歩となるはずです。
この記事が投資の失敗談としてだけでなく、老後における「幸せの再定義」のヒントとなればと思います。
ファイナンシャルプランナー
青山創星