会社員や公務員は給与から天引きされるため、年金保険料についてあまり意識することはありません。だからこそ、転職などの際にいつのまにか保険料を滞納しているケースも。さらに悪質な保険料滞納者には恐ろしいペナルティが……。その数、1年で3万人にのぼります。
日本年金機構から届く「赤い封筒の最終警告」を全国18万人が無視…そのうち3万人が直面した「悲劇の1日」 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本年金機構からの再三の警告を無視すると…

「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)」が届いてもなお、保険料の納付を拒み続けると、「特別催告状」が届きます。この特別催告状は封筒に入っており、最初は青、次に黄、そして赤(ピンク)と、まるで信号機のように色が変わり、3回ほど送られてくるのが通例です。

 

赤い封筒の特別催告状でも納付しない場合、「最終催告状」が届きます。ここには「同封の納付書で滞納分全額を指定期日までに納付すること」「納付がない場合、差押えに移ること」が記されています。それでも納付しないと、「督促状」が送られてくる。督促状で指定された期日までに納付しないと、その分、延滞金が発生します。さらに無視を続けると、「差押予告通知書」が届きます。日本年金機構が財産調査を行ったうえで送付するもので、差押え前の最後通告。これ以降は予告なしに差押えが実行されます。

 

田村さんの場合、赤い封筒に入った「特別催告状」まで無視を続けたといいます。というよりも、そんな一大事になるとは考えず、面白おかしくSNSで「赤い封筒が届いた」と報告。それをみた友人から「すぐに保険料を払ったほうがいい」と連絡をもらい、すぐに対応して難を逃れたといいます。

 

――友だちが「すべて失うぞ!」って脅すから(笑)。一気に滞納分を払えないから、親からお金を借りました。

 

厚生労働省の発表によると、2023年、最終催告状は17万6,779件に、さらに督促状は10万2,238件に、最終的に「財産差押」となったのは3万0,789件でした。差押えの対象となるのは、「所得額300万円以上で7ヵ月以上保険料未納」。この条件は年々厳しくなり、いずれ無条件になる可能性はあります。

 

実際に財産差押えになると……午前中、家のインターフォンが鳴り響きます。そこには執行官が立っているでしょう。「財産差押えを行います」と告げられ、心臓が跳ね上がるはず。その直後、執行官が家のなかに入ってきて、押収対象の家財を確認し始めます。差し押さえる財産に「差押標識」を貼付され、その財産が差押えの対象であることが明示されます。現金や預金通帳が見つかった場合はその場で押収され、不動産や自動車などの大型資産の場合、その場で差押えの登記や登録がなされます。ひと通り終われば、執行官は差押調書を作成し、コピーを滞納者に交付。差し押さえられた財産は、後日換価処分(売却)され、滞納金に充当されます。

 

もし執行官の立ち入りを徹底して阻止したら。数ヵ月後、金融機関から「差押調書謄本」という書類が届きます。「あなたの口座は差し押さえましたよ」というもので、確認すると残高がゼロに……そんな事態に見舞われるでしょう。

 

このように、国民年金保険料の未納が続くと、最終的には財産の差し押さえという厳しい措置が取られる可能性があります。未納を防ぐためには、日頃から通知に注意を払い、納付が難しい場合は早めに年金事務所に相談することが重要です。

 

[参照]

厚生労働省『令和5年度の国民年金の加入・保険料納付状況について』

日本年金機構『国民年金保険料を納付していない期間がある方にお知らせをお送りします』