娘と孫の帰還で生活一変、老後の余裕が消えていく日々

「困ったときはお互い様」と、娘の美香さんと孫の健太くんを快く迎え入れた田中さん夫妻。同居に備えて2階の6畳間を改装し、子ども部屋用の家具も新調。リフォーム費用だけで150万円もの支出となりました。

そこからは生活が一変。食費は月5万円増、光熱費は月2万円増、さらに孫の保育料(月4万円)、週2回の体操教室(月1.2万円)、娘の携帯代(月1万円)など、想定外の出費が次々と増えていきました。

「保育園も『求職中』という理由では入園が難しく、高額な認可外保育園を選ばざるを得なかったんです」と葉子さん。美香さんは「職探しをする」と言いながら、半年で面接2社のみ。それ以外は地元の友人とのランチや飲み会で外出することが増え、「就職先を紹介してもらったお礼」と言い訳するように。育児の負担は自然と両親に集中していきました。

ジイジ、バアバと慕ってくる孫はもちろん可愛いのですが、最近は戦隊モノのテレビ番組にハマっていて、全力で戦いを挑んでくる3歳児。受けて立つ68歳の親雄さんとしては、腰痛が悪化する一方です。

「わたしら、一生、娘と孫のために生きる人生なのか……」

お風呂上がりに背中に湿布を貼ってくれる葉子さんに、つい口から愚痴が出てしまう親雄さん。夫妻の楽しみだった温泉地巡りやボランティア活動、家庭菜園の時間は、すっかり娘親子中心の生活に置き換わってしまいました。

半年以上の同居生活で、ついに田中さん夫妻は重い口を開きました。「美香、このままじゃ私たちの老後資金も、体力も持たないよ」

その言葉に、美香さんは思わず反発します。「こっちだって、好きで出かけているんじゃないの! 就職先を紹介してもらったお礼にランチとか奢らせてもらってるんだから。そんなに急かさないでよ!」

元夫から経済的虐待を受けていた美香さんは、お金のことを言われて感情が爆発。しかし、両親の真剣な表情を見て、ようやく現実を直視するようになったのです。