マイナンバーカードは人口に対する保有枚数率が8割近くとなりますが、日常の利用シーンが限られるため利用率や携行率は高くありません。こうしたなか、活用推進策の1つとして民間事業者での利用の活発化、特に、「転売防止策」としての役割が模索されています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の河岸秀叔氏がエンターテイメント領域でのマイナンバーカードの活用について詳しく解説します。

4.定着への課題-持ち歩いているが、持っていない若者-
エンターテイメント領域での活用には、10代・20代前後の若者をいかに巻き込むかが重要になろう。年に5日以上コンサートやスポーツ観戦に参加する人の割合は、若者ほど高い(図表4)。また、若者ほど推し活を実施していることを考えても、エンターテイメント領域での活用推進には、若者の積極的な利用が必要不可欠だろう。
しかし、利用面については課題も想定される。若者はマイナンバーカードを持ち歩く反面、他年代と比べてマイナンバーカードの保有枚数率は低い(図表5、6)。比較的、まだ取得していない人が多い世代でもある。
これまで、マイナンバーカードの取得促進は、マイナポイントなどの明確な経済的メリットにけん引されてきた14。実際、10・20代の47.2%が、マイナポイントを取得のきっかけに挙げている。このように、取得の動機が経済的メリットに依存してきた現状を踏まえると、今後の取得促進には、セキュリティ上の不安の払拭や、「持ったら便利」というメッセージをより強く若者に伝える必要があると言えよう。
もちろん、まだ実証実験の段階である。ただ、転売対策として推進するのであれば、若者の約3割が未保有の現状は好ましくない。今後の実証実験の結果と、取得の進捗についても注視していきたい。
14デジタル庁「業種別マイナンバーカード取得状況等調査」2024-03
(参考文献)
奥窪優木「転売ヤー 闇の経済学」(新潮新書 2024-11-20)